第1回ではニカラグアコーヒーの背景にある自然環境、第2回では三大産地のテロワールの違いをご紹介しました。
最終回は、ニカラグア産コーヒーの多様な品種特性と味わいの特徴を取り上げます。現在海ノ向こうコーヒーで取り扱っている3種類の豆のカッピング、個性を最大限に引き出すための焙煎度合いの違いについてご紹介します!
ニカラグア産コーヒーの味わいについて

ニカラグアのコーヒーを飲んで最初に感じるのは、雑味のないバランスの良さです。ニカラグアの高地の火山性土壌で育つコーヒーチェリーは糖度が高く、丁寧な精製が加わると自然と品のある味わいになります。丸みがあり「酸っぱいコーヒーは苦手」という方にも飲みやすく幅広い人に受け入れられやすい産地です。
海ノ向こうコーヒーでのカッピングでは「ジューシーなのに重くない」「ボディはしっかりしているのに飲み疲れない」という声が上がりました。酸味、甘み、コクのバランスの良さが、ニカラグアコーヒーの特徴であり、大きな魅力です。
ニカラグアの多様な品種特性

ニカラグアのコーヒーはほぼ100%アラビカ種で、カツーラが栽培面積の約70%を占める主力品種です。残りをブルボン・カツアイ・マラゴジペ・マラカツーラ・パカマラ・カティモールなどで構成しています。ジャバニカやマラカツーラなどの希少品種の産地としても知られており、品種の多様さもこの国のコーヒーの魅力のひとつです。ここからは、海ノ向こうコーヒーで取り扱っている3つの品種のルーツと特性をご紹介します。
①レッドカツアイ
レッドカツアイは、ブラジルで生まれたムンドノーボとカツーラという2つの品種を掛け合わせて開発された品種です。収量が高く、樹高が低くコンパクトなため管理や収穫作業がしやすいという特性から、ブラジルを起点に中米各地へと広がり、現在ではグアテマラやニカラグアでも広く栽培されています。レッドカツアイは完熟すると深い赤色のチェリーをつけ、イエローカツアイと見分けるときの目安になります。
フレーバーはチョコレートやキャラメルのような落ち着いた甘みがベースにあり、標高や精製によってシトラス系の酸やフローラルなニュアンスが顔を出します。ウォッシュドで仕上げると余計なものが削ぎ落とされ、豆が持つ酸と甘みがクリーンに出てきます。そのため「産地や精製の個性を前に出したいとき」に使いやすい品種ともいわれています。
②ジャバニカ(ジャバ)
エチオピアの在来品種「アビシニア」を起源に持ち、コスタリカを経由してジャワ島に渡り、その後ニカラグアに持ち込まれた品種です。長らく「ティピカの突然変異種」と考えられていましたが、遺伝子解析によってエチオピアの在来種であることが判明しました。
フレーバーは柑橘系の香りとフローラルな甘み、スパイシーなニュアンスが重なり、質感はとろりとして滑らかな味わいで、エチオピア由来の品種らしい華やかさを持ちながらも、ニカラグアの土地ならではのまろやかさを感じる品種です。
③マラカツーラ

ニカラグアで生まれたカツーラとマラゴジッペを交配させた品種です。最初の選抜は1976年にニカラグア農業技術研究所(INTA)によって行われましたが、サンディニスタ革命の影響で選抜作業が完了しなかったという経緯があります。マラゴジッペ譲りの大粒な豆が最大の特徴で、初めて目にすると「これがコーヒー豆?」と思わず声が出るほどの存在感があります。
カップはイエローピーチや柑橘系の爽やかな酸が特徴的で、飲み進めるほどに旨みが増していきます。シダーを思わせるウッディなニュアンスも顔を出し、複雑さがありながらも飲みやすく、中煎りで黄桃感のある甘みと柑橘の酸がきれいにまとまります。
品種別に味わいを比較

今回仕入れた3商品は、品種も精製方法もバラバラ。実際にカッピングして、それぞれの個性をを比べてみました。
①レッドカツアイ:ニカラグア マイクロロット サンタマリア・デ・ロールデス農園 ウォッシュ
マイクロロットのウォッシュドで仕上げたロットです。農園単位で管理された小ロットならではのトレーサビリティの高さが、カップのクリーンさにそのまま現れています。

<カッピングコメント>
ハーバルで華やか、酸のまとまりが良い印象でコーヒーとして邪魔にならない上品な味わいです。中煎りではシトラス系の酸とニカラグアらしいマイルドな甘みのバランスが取れており、白葡萄やグリーンアップルを思わせるきれいな酸が心地よく続きます。アフターにはローストナッツのニュアンスがあります。ボディが軽めで飲み心地がよく、スッキリとしたブレンドに使用するのもおすすめです。クリーンで飲み飽きないため、団子や饅頭などの和菓子と楽しむと、より一層甘みが引き立ちます。
②ジャバニカ(ジャバ):ニカラグア ブエノスアイレス ミックスプロセス
ウォッシュドとナチュラルを組み合わせたミックスプロセスで仕上げたロットです。ジャバニカという品種の複雑さに、ウォッシュドらしいすっきりした印象とナチュラルのコクや甘みが感じられるコーヒーです。

<カッピングコメント>
カッピングでの印象は「ウォッシュのクリーンさが7割、ナチュラルのフルーティさが3割」というものでした。柑橘系の香りとフローラルな甘み、コリアンダーのようなスパイス感、フルーツトマトを思わせる甘みが層を重ねるように広がります。中煎りでは深みも顔を出し、質感はとろっとして滑らかで、飲み込んだあとも余韻が長く続くのが印象的でした。ミックスプロセスは火が入りやすいため、焙煎の際は温度上昇を緩やかに保ち、火を強くしすぎないのがおすすめです。チョコレート系の焼き菓子やチーズケーキとの相性がよく、一緒に楽しむのがおすすめです。
③マラカツーラ:ニカラグア ブエノスアイレス フリーウォッシュ
フリーウォッシュで仕上げたロットです。クリーンさがきれいにでる精製方法で、発酵させるためクリーンで酸味が際立ちやすく、このロットでもマラカツーラらしい柑橘感と甘みが楽しめます。

<カッピングコメント>
カッピングでは「黄桃」「ネーブルオレンジのような爽やかな酸味」「シダーを思わせるウッディな香り」という声が集まりました。ボディ感は柔らかく、飲み始めよりも飲み進めるほどに旨みが増してくるりんご系のきれいな酸が特徴です。このロットは深煎りにすると柑橘感が消えてカカオ寄りのプロファイルになるため、黄桃感のある甘みと柑橘の酸を活かしたいなら中煎りまでにとどめるのがおすすめです。ボディが柔らかく旨みを補う性質があるため、ブレンドにも使いやすいロットです。ペアリングはシトラス系のタルトや軽めのチーズなどと楽しむのがおすすめです。
おすすめの焙煎度合い

レッドカツアイはウォッシュドのクリーンさを最大限に引き出すなら中煎りが最適で、深煎りにすると品種の個性よりもロースト感が前に出やすくなります。ジャバニカはミックスプロセスの複雑さを活かすために中煎りで仕上げるのがベストで、深煎りにしても滑らかさが残りやすいのが強みです。マラカツーラは大粒ゆえに均一に火を通すのが難しいため、中煎りで安定させてからロースタープロファイルを探っていくことをおすすめします。
3種類共通して、中煎りが最もそれぞれの個性を引き出しやすいという結果になりました。ニカラグアのコーヒーは酸味、甘み、コクのバランスが整っている分中煎りという、どの要素も活きる焙煎度がよく合います。はじめてニカラグアを焙煎する場合は、まず中煎りを基準にして微調整するのがおすすめです。
柔らかな酸味と、毎日飲みたくなるようなバランスの良さ。そんな魅力が詰まったニカラグアのコーヒーを、この機会に手に取ってみてくださいね!

ニカラグアのコーヒーは、こちら。
毎日飲みたくなるようなバランスの良さが魅力です。
