ネパールでコーヒーをつくる。わたしたちの挑戦(1)

こんにちは、海ノ向こうコーヒーで輸入・焙煎を担当している舛田です。

今年、販売を開始したネパールのコーヒー。
すでに試していただいた方もいらっしゃるでしょうか?

他のアジアの産地の豆の到着から少し遅れて、先日20/21年クロップの飛行機が到着しました。
昨年のクロップより良くなっているかな…期待半分、不安半分の気持ちでしたが、先日カッピングしたところ、酸味の明るさやアフターの長さアップしていて、昨年よりもバランスが良くなった印象でした。
豆のアピアランスも、白い豆が多かった昨年に比べて改善していました。
クリーンさやボディなどまだ課題も残りますが、来年以降さらなる品質の向上が期待できる仕上がりでした。

ネパール。私にとっては、とても思い入れのある産地です。せっかくの機会なので、ネパールとの出会いからコーヒー栽培を始めてみなさんにお届けするまでのストーリーを綴りつつ、ネパールという産地への想いを書いてみようと思います。

なぜネパール?

一番右がGaneshさん

「なぜ、ネパールなんですか?」
私がよくいただく質問です。

なぜ、ネパールなんでしょう…。
いまだにはっきりと答えることができません。

しかし、1つだけ確実に言えるとするならば、
現在、現地パートナーとして一緒に活動してくださっている、Ganeshさんとの出会いがすべての始まりだったということです。

私が初めてネパールに行ったのは、2016年。
当時、大学2年生だった私は2015年の大地震の復興支援の一環で、ネパールに訪れました。

そこで出会ったのが、現地で旅行業や日本語教育、ITなどさまざまな分野の企業を取りまとめるグループ会社の社長、Ganeshさんです。
(本当に素敵な方なので、Ganeshさんのヒストリーをいつか書きたいなと思いますが、今回は割愛します。)
「Ganeshさんと、一緒に働いてみたい」
そんな、学生ならでは純粋かつ大胆な思いで、Ganeshさんの会社でインターンをさせてくれないかと申し入れたところ、快く受け入れてくださいました。

それから1年後、私のネパール生活が始まりました。
私のおもな仕事は、日本語学校の先生。
日本への留学をめざす学生たちに、日本語を教えていました。

「なぜ日本に行きたいの?」
そんな質問を学生たちに聞いてみたことがあります。

「日本で働きたいから。
働いてお金を稼いで、家族のためになりたい。
両親は村にいて、仕事も農業しかないんだ。
だから、私が頑張って働いて楽をさせてあげなきゃ。
ネパールではいい仕事がないから。日本に行って仕事見つけないと。
家族と離れ離れになるのは、悲しいけどね。」

そんな彼ら彼女らの純粋な思いに心が揺さぶられたことを覚えています。

ネパールでコーヒー?

ある日、ネパール人の友人の実家に遊びにいかせてもらえることになりました。
カトマンズから車で4時間くらいの小さな村。
ちょうど、1年で一番大きなお祭り「ダサイン」の時期だったので、友人の家族や親戚、村の人たちとお祈りをしたり、たくさんのごちそうを食べたり…とても楽しく過ごしました。
「カトマンズの喧騒から離れ、村の生活って穏やかでいいなあ」
そんなことをのんきに考えていました。

電気が十分ではないこの村では、夜も早いです。
1つ2つと民家の明かりが消え、空の星たちの輝きが一層強く感じられる夜。
外に出て景色を眺めていると、ふと、ネパール人の友人が話し始めました。

「実は、コーヒーを植えてみているんだよね。」

え?コーヒーを植える?
どういうことなんだろう。

当時、コーヒー栽培について全く知識のなかった私は、頭にはてながいっぱい。
コーヒーを「植える」ということにさえピンと来ていませんでした。

ーどうして?

「コーヒーは、野菜とかに比べてきっとお金になるでしょう?
村にいても、ちゃんとお金を稼げるようにしたいんだ。
村にいるのはほとんどが農家ばかりだよ。
もちろん自分たちが食べる分は収穫できるし、生きていくのには困らない。
けど、子どもたちに良い教育を受けさせるためには全然足りないんだ。
大学に行かせてあげたくても、お金がない。
大学に行ってないともちろん、良い仕事にもつけないよね。
そうすると、そのこどもも農家になるか、海外に行って危険な仕事をするか…そんな選択肢しかなくなる。
だから、農家の子どももちゃんと学校に行かせてあげられたらいいなと思うんだ。」

ー村に学校はないの?

「大学はない。
小学校や中学校、高校も昔は校舎すらなくて…
僕も小学生のときは木の下で授業を受けていたよ。
日本や海外の支援で、学校はできている。
でも学校があっても、学校に行けない子は行けないんだよ。」

ーそれはどうして?公立の学校だったら授業料とかいらないはずじゃ…

「理由は1つじゃないけど、
親が仕事が農業しか仕事がないとすると、雨季の間は村にいて農業をしているんだけど、乾季になると、町に出稼ぎにいったりすんだ。
例えば、レンガ造りの工場とか。
で、子どもも一緒に連れていったりするんだよね。場合によっては、手伝わせたりすることもある。
すると、どう?学校には半年間行かないことになる。
半年間学校に行っていない子どもが、試験に合格して、良い成績をとることができると思う? 」

この話を聞いた私は、なんて自分は浅はかだったんだろうって思いました。

都市部からちょっと離れると、すぐに目にすることができる豊かな自然。
初めて会った私を家族のように受け入れてくれる村の人たち。
家族のために日本で働くんだと頑張る学生たち。

いろいろなことが頭の中を駆け巡り、

「…あのさ。コーヒー、一緒につくろう。」
そう言わずにはいられませんでした。

ネパールでのコーヒープロジェクト始動

カトマンズに帰ってから、すぐにGaneshさんに相談しました。
村でコーヒーをつくりたいと。

なんと、Ganeshさんは「なおさんがそこまで言うなら、まずやってみよう。」と言ってくれたのです。
ただの学生の意見を、聞いてくれたGaneshさん。いま思うと自分はなんて無謀なことをしていたんだろうと、反省します…。

やると決めたものの、ここからが大変。
友人に聞きながら、いろいろとコーヒーについて調べ始めました。

コーヒーは、開けた土地がなくても森の中でも育てることができること。
標高が高いことは、コーヒー栽培においては強みにもなること。
コーヒー(パーチメント)は、野菜や果物より輸送中に傷んでしまう可能性が少ないこと。
持続可能なコーヒー生産が、もしかしたら何かプラスのことを生み出せるのではないか…と明るい未来を想像しながら必死に学んだのでした。

海ノ向こうコーヒーとの出会い

とはいえ、私もGaneshさんもその友人も、コーヒーづくりに関しては全くの素人。
自分たちだけでやるには、限界がありました。

そこで、日本のパートナー(NPO法人Colorbath)に紹介してもらったのが、海ノ向こうコーヒーです。
(NPO法人Colorbathとは、今も一緒にネパールのコーヒープロジェクトに取り組んでいます。詳しくは、坂ノ途中のプレスリリースをご覧ください!)

コーヒーの専門家として、栽培から精製、販売のことまでたくさんのことを教えてもらいました。
そして、その活動は今も続いており、私も現在は海ノ向こうコーヒーのスタッフとしても、ネパールのコーヒープロジェクトに関わっています。

大規模な土地もない、険しい山々で道路が整っていない、海外への物流も厳しい。
ネパールにはたくさんのハードルがありますが、そんな弱みを強みに変えられるような産業作りを、これからも農家さんと力を合わせて取り組んでいきたいと思っています。

「ネパールでコーヒーをつくろう」とプロジェクトを初めてから約4年がたちました。
過去のブログはこちら >>

今は、海ノ向こうコーヒーでネパールの豆を販売したり、焙煎したりしている…。
夢のようで、まだ少し信じられないという気もするのですが、こうして日本のみなさんにネパールのコーヒーを紹介できることがとても嬉しいです。
いつも応援してくださっているみなさん、本当にありがとうございます!

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先日、ブログにも出てきたGaneshさんとお話しました。
一部収録しましたので、良かったらぜひ聞いてみてください!
Ganeshさんとのお話はこちらから>

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株式会社坂ノ途中
海ノ向こうコーヒー事業部
輸入・焙煎担当 舛田菜緒
EMAIL: umi@on-the-slope.com
TEL: 050-7111-2209(お客さま窓口)
075-205-5380(代表)
FAX:075-205-5381

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