「海ノ向こう」になるまで。

こんにちは、安田です。

11月からの産地訪問に向けていろんな準備をバタバタとしていましたが、
少し心に余裕がでてきたのでリニューアルに込めた思いをちょっとだけ語ってみたいと思います。

まずは「海ノ向こうコーヒー」の前身である 「Mekong Organic Project」の話から。
「百年先も続く、豊かな森をラオスから。」をコンセプトに、失われていく森を未来につなぐプロジェクトとして発足しました。
ロゴマークが表現するのは、多様な森と人々の暮らし。
遠くからみるとただの山でも、グッとのぞき込んでみると多様な動植物。人が自然の一部として溶け込んでいる様子を表しています。

こっそり込めたのは、時間をかけて自分自身も多様な暮らしの一部となりたい、という想いでした。
でも2年半、農家さんと一緒にコーヒーづくりを行ってきて感じたのは、僕たちが産地にはいる意味は、もともとの想いとは真逆で、僕たちが「よそ者である」という部分にあるのではないか。ということでした。

今思うとごく当たり前のことなのですが、ロンラン村の未来は、そこに暮らす人たちが決めるべきだし、むやみやたらと新しい知識や技術を伝えていくことが良いとは限らないと、ふとした瞬間に気づきます。

じゃあ何ができるだろう。

僕にできることは、「他の人がやっていることを紹介すること」くらいでした。

例えばミャンマーの生産者さんが、新しい精製場をつくったけど廃水の処理に困っている。
そんなとき、ラオスの精製場で行っている、微生物を使った浄水装置を紹介しました。
大掛かりな機械もいらない方法なので、コストも抑えることができると、これを少しカスタマイズして導入。
ミャンマーでの水質汚染を少し抑えることができそうです。

ミャンマーの設備。ラオスはもっとこじんまりしたものです。

逆にミャンマーで、コーヒーチェリーの買取価格を公平に決めるためのふるいの作り方を教えてもらいました。
穴が50個空いていて、袋の中からランダムにチェリーをすくう。そこに含まれる未熟豆の数だけ買取価格を差し引く、という仕組みです。これで、地域の集荷担当の若者が、農家さんに熟度を揃えて!って言ったときに、「なんで他のやつには言わないんだ!」と怒られてしょげることが少なくなります。今期はラオスでこれを試してみる予定です。

写真のふるいは、1列多く穴を開けてしまったらしく、穴の数がちょっと中途半端…

僕自身は何か特別な技術や知識を持っているわけではないのですが、
同じ課題にぶつかって、それぞれ工夫してこられた産地同士の知見のつなぎ役となることで、周辺地域の農家さんみんなで一緒においしいコーヒーづくりを目指していくことができるかもしれない。

これは面白い。これなら僕でも農家さんたちに貢献できるかもしれない。
そう思って、ラオスを飛び出してコーヒー屋さんとして活動していく覚悟を決めました。

海ノ向こうコーヒー

コーヒーの木で縁どられた窓の向こうから、船がやってくる。遠く海の向こうの山奥、深い森の中でとれたコーヒー豆とそこに暮らす人々の物語を積んで。

僕たちにとって、扱うコーヒーの産地を増やすことは、その数だけの文化や暮らし、そこに広げられる自然環境と積み重ねられてきた歴史に出会う、ということです。
それは本当は「ラオス」「ミャンマー」なんて枠では説明しきれない。地域ごと、村ごと、農家さんごとの物語があります。
誰がどこでどんな思いで育てて、収穫して、精製して、運んで、保管して、焙煎してくれたのかを知った上で、飲むコーヒーの”おいしさ”を届けたい。

飲むと想像力をかきたてられるようなコーヒー。一杯ごとに産地の風景がふわっと浮かんでくるようなコーヒーとその物語をお届けしたいと思っています。

が、いまはまだまだ発展途上。
一歩ずつ。あたたかい目で見守っていただけると嬉しいです。

こうして振り返ってると、名前考えてるときはもう全然仕事に手がつかなかったことを思い出しました。
ブランド名が「海ノ向こうコーヒー」になるまでのボツ集とか面白いのかも。
また時間みつけて思い出してみます。

ではまた。