【Podcast ep.103】グアテマラ渡航の話

音声で聞きたい方はこちらのPodcastから

今回のスピーカー

海ノ向こうコーヒー
生豆営業担当
藤原

滋賀県出身。通称まりおさん。 海ノ向こうコーヒー最古参のスタッフで、「おかん」ぽいと言われる。 東京在住ながら、ポッドキャストでは誰よりも流暢な関西弁を喋る。 コーヒーのソムリエとも言える、Qグレーダー保持者。

海ノ向こうコーヒー
ものがたり共創室
山藤

埼玉県出身。俯瞰して捉える視点とグッと当事者に近づく感覚を行き来しながら、物事を前に進めるのが得意。特技は、人の良いところを見つけること。チャーミングな笑顔も魅力的。

オーロラ農園の歴史とアルドさん一家

藤原:本日もポッドキャスト始めます。今日は山藤さん(以下、山ちゃん)と2人でお届けします。山ちゃんは3月にグアテマラに行かれてましたよね。

山藤:はい、ヒロさんと行ってきました。私は3月後半の2週間ほどで、ヒロさんはさらに2週間前から前乗りして別のミッションもこなしていました。

藤原:久しぶりにヒロさんを見たら、もうすっかり褐色の肌になってましたよね。

山藤:そうなんです。スペイン語も自然に出てきていて、自己紹介もスペイン語でされてました。通訳の方が常にいたんですが、たまに訳を忘れられる時があって、私はギリギリ知ってる単語を組み合わせて何とか理解しようとしていました。理解できるはずの言語のはずなのに、すごく脳みそが疲れるんですよね。

藤原:2週間のうち、前半と後半があって、今回は後半から話そうと思っています。

山藤:前半は、いま未来づくり推進室でパートナー的に関わらせてもらっているJICAのプロジェクトの一環で、日本のロースターさんをと共に生産地を巡る内容でした。まだ取引のない生産者のところも訪れています。後半は、私たちもずっと付き合いのあるオーロラ農園への訪問でした。今日はお客さまにも馴染みのあるオーロラ農園の話から進めたいと思います。

藤原:オーロラ農園はグアテマラのコバンという地域にありますよね。

山藤:はい。アンティグアなどに比べるとまだ知名度は低いんですが、グアテマラのほぼ中央に位置しています。グアテマラシティから車で北に4時間ほど、山道を登り下りしながら行きました。途中で通る道の一つはベリーズまで続く道、別の道は西側の海岸まで続く道だと教えてもらって、コバンが中央に位置しているからこそ、いろんな方向への道が通っているんだなと思いました。

藤原:コバンは生産地としてはまだ知られていない一方、19世紀後半にドイツ系移民がコーヒープランテーションを開いたという歴史もあるんですよね。

山藤:そうです。もともとグアテマラは天然染めの織物・糸が輸出産業として盛んだったんですが、人工染めの安価な製品が他国で出回るようになって衰退してしまって。当時、コスタリカがコーヒーでうまくいっていたのを見て、グアテマラもコーヒーに力を入れようと、大統領主導でプランテーションを拡大したのが1880年代後半頃です。その頃にドイツ系の移民がコバンやアンティグアに入植して、実際にコーヒープランテーションを作り始めた場所の一つがコバンでした。

訪問したオーロラ農園も、その頃にドイツ人が始めた農園で、今は農園主アルドさんたちが引き継いでいます。当時の加工設備も見せてもらいました。コバンの中心部には、街並みや教会など、ドイツの影響を感じさせる場所も残っています。

藤原:オーロラ農園という名前の由来は何だったんですか?

山藤:私も現地で初めて知ったんですが、グアテマラの国鳥・ケツァールのメスのことを「オーロラ」と呼ぶそうで、そこから名付けられたそうです。農園を引き継いだ当初から自然保護のプロジェクトをやろうとしていて、自然保護できる場所にしようという思いが込められているという話でした。

藤原:農園主のアルドさんは、コスタリカでの自然保護とエコツーリズムの成功を見てこのプロジェクトに着目した、という話もありましたね。

山藤:そうみたいです。アルドさんは、お父さんのドン・アルドさんの代から農園を引き継いでいて、お二人とも本当に多角的にビジネスをされていました。私たちが泊まらせてもらったホテルも経営されていますし、コスタリカでもホテルを経営、イタリアンレストランやイタリアのオリーブ農園、グアテマラシティ近郊の靴工場まで持っていました。

藤原:オーロラ農園自体は約22年前にドイツ人の前農園主から引き継がれて、最初はチェリーを仲買人に販売するだけだったところから、コスタリカのコーヒー農園の方に農園再生を手伝ってもらいながらコーヒー事業に力を入れていったんですよね。コーヒー栽培に使っているのは20ヘクタールだけと聞いていますが、所有地全体はもっと広いんですよね。

山藤:はい、所有地は150ヘクタールくらいあって、そのうち20ヘクタールほどをコーヒー農園として使っています。残りは動物学や生態保護の目的で保護区になっていて、ピューマなどいろんな動物が生息しているそうです。鳥類保護の側面も大きいと思います。


加工設備と環境への配慮、地域への還元

藤原:農園だけでなく、ウェットミルやドライミルもお持ちなんですよね。

山藤:そうです。自分たちの農園でチェリーを加工して輸出できる状態まで仕立てる設備を持っています。さらに周辺の農家さんからパーチメントを買い付けて輸出用に仕立てる、という2本立てでやっています。うちの商品ページに載っている農家さんの名前が入ったロットは、オーロラに持ち込んでくれている周辺農家さんのものです。

藤原:精製方法もウォッシュが基本だけど、ニーズに合わせていろいろ実施されているんですよね。

山藤:はい。ハニーやナチュラル、アナエロビックのロットもありました。アナエロビック用の大きなタンクも見せてもらいました。

藤原:加工設備もすごく清潔に保たれていて、ステンレス製のものが多いという話もありましたね。

山藤:はい、ウェットミルが全部ステンレス製で、フローター選別をするところから水路、パーチメントが溜まるタンクまで、すごく清潔に保たれていて、掃除もしやすそうだなと思いました。

藤原:化学肥料を少しずつ有機肥料に変えていく取り組みもされてましたよね。

山藤:はい。加工で出るカスカラやミューシレージを除去したジュースをタンクに貯めて、バクテリアに発酵を手伝ってもらって有機肥料を作っていました。あとは選別で弾かれたチェリーを使った特殊発酵の試みもありましたし、使用した水もフィルターにかけて再利用していて、環境への意識がすごく伝わってきました。

藤原:環境への配慮もそうだし、地域への還元もすごく感じますよね。さっきの話で、周辺農家さんからパーチメントを買い付けるという話がありましたが、農家さんが仲買人に直接販売してしまうこともあるんじゃないですか?

山藤:そうなんです。グアテマラのサプライチェーンは、小規模農家さんが9割で、オーロラのようにウェットミル・ドライミルの設備を持っているところはわずかです。なので基本的には、農家さんが収穫したチェリーを仲買人(現地では「コヨーテ」と呼ばれます)に売る、という流れが伝統的にあります。仲買人によってはすごく安く買っていく人もいるので、オーロラ農園のような存在が、適正な価格でちゃんと買って、農家さんが適切な収入を得られるようにする、という側面が強いと感じました。チェリーの収穫をしてくれるピッカーさんにも、周辺の収穫の仕事より数%上乗せした給料を払うようにしているそうで、関わる人たちのことを大切にしているなと感じました。

藤原:地域への取り組みもありましたよね。コバンという地域から貧困をなくしたいという思いがあるとか。

山藤:そうです。コバンが位置する県は、貧困問題や格差が地域的な課題になっているそうで、それに対する取り組みとして「オーロラ・スタジオ・プロジェクト」が行われています。オーロラ農園のコーヒーの収入を、地域の人々の生活向上のために充てるプロジェクトで、薪ストーブやソーラーパネルを購入して各家庭に設置しています。このプロジェクトに関わるロットは、うちの販売ページでもオレンジのアイコンを付けています。

藤原:今回の訪問の目的の一つが、実際に導入された家庭を見て、どう活用されているかを見ることだったんですよね。

山藤:はい。カンパット村というところで3軒ほど見せてもらいました。1軒目はストーブが導入された家で、少ない薪で効率的に熱を得られて、お湯を沸かしたり料理したりが効率的にできて、煙突がついているので排気を外に出すことができます。2軒目はまだストーブが導入されていない家で、石を積んだ上に薪を並べて直接火を焚くむき出しの火で、子供たちがその周りで遊んだりして事故の危険もある状態でした。料理の効率も悪い構造のものを、安全で排煙もできるものに置き換えるという取り組みでした。排気が外に出るというのは大きな違いで、設置されていない家は煙が充満していて、呼吸器にも良くなさそうでした。また標高も高くて朝晩の冷え込みもあるので、すごく有用だなと思いました。

藤原:日本でイメージするお家とは違って、一つの空間にベッドも台所も洗濯も全部入っているんですよね。

山藤:その通りです。1部屋の中で、床というより地面の上に住居がある感じで、ブロックや木の板で囲われて屋根がついている、という構造でした。

藤原:カンパット村ではコーヒー栽培へ興味を持っている方もいたんですよね。

山藤:はい。庭先でコーヒーの木を育てて収穫し、ストーブで焙煎して飲んでいる村人もいました。コーヒーを収入源にしていきたいという興味を持っている方たちがいるエリアでもあります。カンパット村はコバンから1時間ほどの、600世帯ほどの小さな村で、換金作物はあまりなくて、訪問した家のお父さんは建設業をされていて、周りで作っている農作物は自家消費用が多いという話でした。そういう意味で、現金収入のためにコーヒーが一つ考えられたらいいですよね、という話をしていました。

藤原:女性の織物の話もありましたね。

山藤:はい。この地域では女性が10歳くらいになると織物を学ぶ伝統があって、自然染め・草染めで糸を染めて、それを織り込んで民族衣装を作っています。その布をコーヒーと一緒に売りたいと、アルドさんが話していました。文化的資産としての価値はすごく理解できる一方、いざ現金化するとなると私たちの方でもアイデアが必要だなと思って、宿題として持ち帰ってきました。コースターやマットのような、お店でも気軽に使ってもらえる小さなものに落とし込めたら素敵かなと思っています。


生産者との交流とサプライチェーン

藤原:最終日には生産者の方々との交流会もあったんですよね。

山藤:はい。オーロラにパーチメントを持ち込んでくれている農家さんたちに集まってもらって、ヒロさんがプレゼンテーションをして、私たちが商品ページで彼らの写真を見せながら販売していることを説明しました。スライドに映った自分たちの顔を見て、照れ臭そうで嬉しそうな様子で、すごく興味深く聞いてくださって。携帯で動画を撮ったり、最後まで写真を撮っている方もいて、いい時間だったなと思いました。自分の作ったものが遠いアジアの国で売られていることを知れるというのは、貴重な機会だなと思います。

藤原:今回の訪問を経て、オーロラ農園のような現地パートナーの存在について、より考えが深まったそうですね。

山藤:はい。前半で訪問したような、まだ輸出経験のない小規模な組合の豆を私たちが入手するためには、グアテマラ国内にパートナーがいることがすごく大事だなと感じました。ダイレクトトレードで頑張ろうとすればできなくもないかもしれませんが、実は生産者側にとってそれは負担が大きいこともあります。間にパートナーが入ることで、例えばサンプルをオーロラ農園に送ればいい、というだけで生産者側のハードルがすごく下がるんです。コミュニケーションのハブになってくれる人たちの存在は、サプライチェーンが整っていく上でとても大事だと、現地で改めて実感しました。

藤原:ダイレクトトレードがベターという考えも一部ありますが、間に入ることが必ずしも悪ではないというのも伝わるといいですよね。

山藤:そう思います。ダイレクトはそれ自体すごいことで、透明性も完璧だと思うんですが、間に入ってくれている人たちが、品質を担保してくれていたり、スピーディに届けてくれていたり、正しい情報を伝えてくれていたり、それぞれの役割を果たしてくれているからこそうまくいっている部分もあります。そういう繋いでくれている人たちの重要性を、もっと伝えていきたいなと思いますね。


新規生産地の開拓

藤原:では前半の話も伺いたいです。

山藤:前半は、JICAのカフェプロコというプロジェクトの一環で、グアテマラコーヒーのバリューチェーン強化と日本市場との繋がり強化を目的に訪問してきました。私たちが扱えるグアテマラのラインナップを増やしていけたら、というのが目的の一つです。

藤原:最初に訪れたのはウエウエテナンゴでしたよね。

山藤:はい。サントス・コックという村に行きました。農家さんたちが集まって、小さなパルパーでチェリーをパーチメントまで仕上げて、仲買人に販売しているという組織でした。課題を聞くと、販路をもっと拡大したい、輸出もしてみたいという話をされていました。この村は珍しく男性も民族衣装を着ていて、赤いストライプのズボンに刺繍の入った襟付きジャケット、みんな同じ帽子をかぶっていて、特徴的な風景でした。

藤原:次に訪れたのはソロラでしたよね。

山藤:はい。アティトラン湖という綺麗な湖の周辺がソロラ県になっていて、その中のラボス組合にお邪魔しました。彼らは自分たちの農園とウェットミルを持っていて、組合に所属する農家さんのチェリーも集めて加工しています。さっきのサントス・コックよりも規模が大きくて、USDAの有機認証も取得しています。ここではカスカラを洗浄・乾燥させる実験に力を入れていて、輸入時に問題になりがちな農薬などの成分を除去できるんじゃないか、という仮説を検証しているところでした。

藤原:アティトラン湖周辺は小規模農家さんが多いという話もありましたね。

山藤:そうです。アティトラン湖の周りにコーヒー農家がポツポツとたくさんあるような感じなので、ラボス以外の周辺農家さんのものも合わせて「アティトラン湖シリーズ」のようなものができたら面白いかなと思っています。周辺の街は文化圏がそれぞれ違って、サン・フアン・ラ・ラグーナという街はアーティストの街として知られていて、建物がカラフルにペイントされていたり、コーヒーの収穫風景を描いた壁画があったりしました。アティトラン湖自体は琵琶湖の3分の1くらいの大きさで、ラボス組合に向かう時はボートで20〜30分ほど渡りました。大雨の中で訪れたときは停電でウェットミルが動かなくなって、稼働している様子を見られなかったこともありました。まだ馴染みのないエリアという意味でも、いつか「湖シリーズ」として取り上げられたら面白いなと思っています。


アンティグア視察とドライミル

藤原:アンティグアにも行かれたんですよね。

山藤:はい、こちらはほぼ観光的な意味合いで、歴史あるアゾテア農園を見せてもらいました。シェードツリーの管理が計画的で、まだ若い木は枝を落として日光を当て、実をつけ始めた木は逆にシェードを残してチェリーが早熟しないようにコントロールしていました。剪定した枝を薪にしている様子も見ました。ここまで緻密に管理している規模の農園を見たのは初めてで、農園管理のレベルに驚きました。

藤原:その後、ボルカフェさんのドライミルに行かれたんですよね。

山藤:はい。実際にうちが輸入しているものを出してもらっているところで、その管理体制に感動しました。パーチメントと生豆、どちらの状態でも保管されていて、合計で約1,000ロットほどあるそうです。同じ生産者から来たものでも納品日によってカード分けされていて、品質管理チームがロットごとに味を取って記録を残し、その傾向を見てお客さんの要望に応じたブレンドや選別条件の調整をしている、という話でした。1,000ロットを管理してデータを取り、要望に応じてブレンドする技術には専門性を感じました。

藤原:輸出用のコンテナの管理についても伺いましたか?

山藤:はい。コンテナは長年使い回すものなので穴が開いていたり汚れていたりすることもあるそうですが、積載前にチェック項目に沿ってしっかり確認されていました。輸送中の品質劣化は完全には防げない分、リスクを最小限にする仕組みがすごく整っているなと感じました。

藤原:グアテマラは、コーヒーを長年輸出してきた積み重ねがあるからこそ、培われたものがあるんでしょうね。

山藤:そう思います。もともと輸出するために頑張って作ろうという流れで始まった部分もあるので、ノウハウがしっかり蓄積されているなと感じました。

藤原:最後に、アナカフェのオフィスでカッピングもされたんですよね。

山藤:カフェプロコのプロジェクトに協力してくれているアナカフェのオフィスで、関わっている生産者のロットをカッピングして、日本に入れられそうなものをいくつか選んできました。サンプルが4月中か5月頭くらいに日本に届くと思うので、それを使って6月にカッピング会と、来られないお客様向けに焙煎豆のセット販売ができたらと考えています。まだロットの数も、すべて取り扱えるかも分からない部分が多いですが、ここで話したような内容のものが届くかもしれない、とワクワクしながら待っていただけたら嬉しいです。

藤原:今日はこのあたりで終わりたいと思います。ありがとうございました。

山藤:ありがとうございました!


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