こんにちは、海ノ向こうコーヒーの山藤です。

2026年3月、グアテマラへ渡航してきました。この国では、国立コーヒー協会(Anacafé / アナカフェ)によって、8つの主要な地域ブランドが確立されています。複雑な地形によって生み出される「地域ごとの個性」が光る生産国です。
コバンのオーロラ農園の話につづき、今回は、8つの産地のうちウエウエテナンゴとソロラの生産者組合、そして私たちが買い付けたコーヒーを輸出してくださっているボルカフェさんの倉庫を訪れたときのことをお伝えします。
山を超え、ウエウエテナンゴへ
首都のグアテマラシティから小さなジェット機でウエウエテナンゴへ。飛行機を降りたら車に乗り換えて、2時間ほどの山道を進むというルートです。
車に乗って早々、目の前に飛び込んできた高い山。案内人のレンチョさんが「この山を越えた向こう側が、今日の目的地だよ」と教えてくれました。この高い山脈を越えてその先!? と衝撃を受けつつも、なるほど、国土の7割が山岳地帯というのはこういうことか、などと考えながら車に揺られます。

高い建物はほとんどなく、窓の向こうにはずっと山々と青い空が続いています。そんな美しい景色を眺めるうちに、目的地のトドス サントス クチュマタン(Todos Santos Cuchumatan)に到着しました。
この一帯で暮らす人々を象徴するのは、鮮やかな民族衣装。グアテマラでは、女性は日常的に民族衣装を着ていることが多いのですが、この地域では男性も揃いの柄のズボンとジャケット、帽子を身に着けているのが特徴的です。
このエリアの協同組合である、コイクベスロール(COICBESLOR)組合の拠点になっているお家を訪れると、組合の一員であるドンベニトさんが、あいさつもそこそこに「まずご飯をたべましょう!」と中に招き入れてくれました。
いただいたのは「チェチト」と呼ばれる食べ物。芋を潰して練った生地でトマトソースで味付けしたチキンを包んだ、現地流のホットドッグです。一緒にコーヒーも淹れてもらいました。「どうやって淹れているの?」と聞くと、抽出の仕方を見せてくれました。
やかんで沸騰させたお湯にコーヒーの粉を入れて火からおろし、しばらくつけておくというシンプルな淹れ方。豆は知り合いのロースターさんに焼いてもらい、隣町でグラインドしたものを、家で保管しているそうです。


もともとこのエリアにあった二つの協同体を、2024年に合体させてできたコイクベスロール組合。より大きな組織となることで生産量を確保し、交渉力を上げ、販路を広げていこう、という意思をもった人々の組合です。 コーヒーの木たちは組合の農家さんの家のすぐそばにまとまって植えられており、品種はカツーラやパチェ、サルチモールが中心。シェードツリーにはインガ(マメ科の樹木)やフルーツの木、アボカド、背の高いスギなども植えられています。適度に陽が入るようにシェードツリーは剪定されており、その枝はお湯を沸かす時の薪木に使われているそう。
家の裏手には小さな手回しのパルパーがあり、収穫したチェリーはすぐにここで果肉を除去しています。12時間水につけて発酵させ、水洗した後、家のそばの開けたエリアにビニールシートを広げてパーチメントの乾燥をおこなっています。
彼らが仕上げるのはパーチメントまで。ここから先は現地で「コヨーテ」と呼ばれる仲買人に販売し、流通していくというのが、彼らが今持っている販路です。
「課題は新しいマーケットへのアクセス。コヨーテ以外にも、自分たちで売り先を見つけたいんだ」と教えてくれました。


アティトラン湖のほとり、ソロラ
次の日もまた車で3時間ほど移動し、ソロラに向かいます。ソロラは「世界一美しい」とも称されるカルデラ湖、アティトラン湖を擁するグアテマラ南西部の県。湖の周辺に、コーヒーの栽培エリアが広がっています。
今回訪問したのは、アティトラン湖の西岸に位置するサンフアン・ラ・ラグアというエリア。町のメインストリートにはカラフルな建物たちがずらり! さまざまな建物に壁画が描かれており、歩くだけでも楽しい町並み。絵描きが多く集まる、アートの街でもあるそうです。

道中では農家さんからコーヒーチェリーを集荷するコヨーテたちともすれ違いました。コーヒーの流通のシーンに出会いワクワクしながら、ラ・ボス(La Voz)組合の農園へ向かいます。
コーヒーの木は胸から顎下くらいの高さできれいに揃えられ、葉もつややかで青々としています。収穫体験をしながら農園を歩き回っていると、雨がぽつり。シェードツリーがしっかりと茂っているおかげでほとんど濡れずに済みましたが、急ぎ足でウェットミルへ向かいます。

ラ・ボスは1979年にできた歴史ある組合。ウエウエテナンゴの組合よりもずっと大規模なウェットミルの設備をもち、200名ほどの組合員から買い取ったチェリーを日々精製しています。
農家さんが持ってきたチェリーは、まず計量され、ここで買い付けがおこなわれます。次にそのチェリーはタイル張りのタンクへ投入されます。タンクの中で待ち構えているのは2人の女性。彼女らは赤くないチェリーをハンドピックしています。最初の段階で完熟チェリーのみに選別することで、高品質なコーヒーを実現しているのです。


ハンドピックを終えたチェリーは、フローター選別、果肉除去の後、水路を使いながらきれいに洗われます。この加工場でおこなうのはウォッシュ精製のみです。
乾燥はパティオとビニールハウス乾燥の二刀流。アメリカの有機認証を取得した農園のチェリーも加工しており、認証品は特にビニールハウスの中で乾燥をおこなっているそう。パティオよりも屋根のあるハウスの環境の方が、石などの夾雑物(きょうざつぶつ)が混入するリスクも低いためです。とはいえパティオの方が乾燥時間が早く、人手もかからず作業できるとのことで、ラ・ボスの人々も乾燥作業の取り組み方は試行錯誤を重ねているところのようでした。
ウェットミルを案内してもらううちに雨は勢いを増していきます。パティオではパーチメントが雨ざらしに。「これは洗ったばかりのものだから大丈夫なんだよ」と説明されました。せっかくハウスがあるなら入れてあげればいいのに、そんなことを考えながら、乾季の大雨にさらされるウェットミルという、めずらしい光景を眺めていました。
彼らの主な売り先は輸出会社。パーチメントの状態まで仕立てて輸出会社に売り、それらは主にアメリカやヨーロッパに流通していきます。生産量の1割ほどは自分たちで焙煎し、組合のカフェで提供したり、地元のお店に卸したりしているそうです。
彼らの新たなチャレンジはカスカラの生産。海ノ向こうコーヒーでは、プロジェクトの一環で彼らにカスカラ生産のアドバイスをおこない、取り組んでもらっています。数年後にはこの組合でつくられたカスカラを仕入れられるかな、と期待を抱きながらウェットミルをあとにします。

グアテマラのコーヒーというと、ほとんどがウォッシュというイメージが強いのではないでしょうか。ウォッシュはスペイン語でいうとlavado(ラバド)。この渡航で出会ったいくつかの農園の方に話を聞きましたが、品質のいいコーヒーはラバドで仕上げるべき、という信条をもつ方が多い印象でした。この地に伝統的なウォッシュを、よりよい品質でつくることに力を入れているようです。

品質管理と輸出の要のドライミルへ
日は変わり、今度は生豆の輸出準備をおこなうドライミルを訪れました。
グアテマラ各地の組合や農園からパーチメントなどが集まる、エル・トレボル(El Torebol)ドライミルで、私たちが買い付けた生豆を輸出してくださっている、ボルカフェさんの倉庫です。
同じ生産組合のものでも、入庫した日が違えば別のロットナンバーが振られて、品質管理担当によってそれぞれカップ評価が行われます。ドライミルというと、脱穀と選別がされる場所、といったイメージが強いと思いますが、実は生豆の「ブレンド」も、ドライミルにおける重要な役割です。
輸出先のクライアントが求めるボリューム・味わい・価格などの条件を満たすよう、保管されている生豆のデータをもとにブレンドを決め、一つのロットを仕上げていきます。
また、輸出に使うコンテナの管理も抜かりがありません。コンテナに大きな外傷や異物混入のリスクがないかを厳密にチェックし、輸送中の品質保全に努めているといいます。日本に粒揃いの美しい生豆が届くのは、彼らの技術と努力があってこそです。

農家さんの家からドライミルまで。サプライチェーンのパーツをひとつひとつ覗いてきたような渡航でした。ほんの一端ではありますが、この渡航記を通じてグアテマラのコーヒーがいかにして日本に届くのか、そこに携わるプレーヤーのことを知っていただけたら嬉しいです。
今回渡航した2つの組合は、JICAが主導する「グアテマラ コーヒーバリューチェーン強化プロジェクト(CAFEPROCO)」における協力対象組織です。海ノ向こうコーヒー 未来づくり推進室はこのプロジェクトに参画し、日本へのマーケットアクセス強化のための役割を担っています。
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