
今回のスピーカー

海ノ向こうコーヒー
生豆営業担当
藤原
滋賀県出身。通称まりおさん。 海ノ向こうコーヒー最古参のスタッフで、「おかん」ぽいと言われる。 東京在住ながら、ポッドキャストでは誰よりも流暢な関西弁を喋る。 コーヒーのソムリエとも言える、Qグレーダー保持者。

海ノ向こうコーヒー
輸出入・品質管理担当
宮﨑
長崎県出身。仕入れに関わる業務全般を担当。産地でのワークショップやプレゼンなど、弾丸の海外出張もこなすトリリンガル。イラストが得意で、麻袋やステッカーのデザインも手がける器用さの持ち主。しっかり者な一方で、ブラックユーモアが大好き。ボソッと面白いことをつぶやく。

LuLaLao Coffee
代表
元川さん
大学院生時代に訪れたラオスでコーヒー農家と出会う。より農村に入り込みたいとJICAに応募し、2019年からパクセーで隊員として活動。任期終了後、ラオス初のスペシャルティコーヒー専門店を目指し「ルララオコーヒー」を開業する。栽培から卸売、焙煎、複数店舗のカフェ運営までを一貫して手がけ、地域や人、領域を横断しながら多角的なコーヒービジネスを展開している。
オープニング
藤原 本日もポッドキャストを始めます。よろしくお願いします。今日は社内からは宮﨑さんと、加えてゲストの方をお迎えしています。海ノ向こうコーヒーで販売させていただいているルララオさんの元川さんに来ていただきました。早速ですが、ご自身でご紹介をお願いいたします。
元川 はい、ありがとうございます。ルララオコーヒーの元川です。よろしくお願いいたします。
藤原 元川さん、今ラオスにいらっしゃるんですよね。
元川 そうです。普段はルアンパバーンという世界遺産の町にいるんですけど、街中は昔住んでいてうるさかったので、山の上に引っ越して静かに暮らしています。
藤原 じゃあ、こんな感じで(静かに)お話しできそうですね。早速お話を進めていきたいと思います。いつも皆さんに伺っているんですが、海ノ向こうコーヒーとの出会いについて教えていただけますか。宮﨑さん、どう始まったんでしょうか?

ルララオコーヒーとの出会い
宮﨑 遡ると、2~3年ぐらい前に海ノ向こうコーヒーにいたスタッフが、元川さんの大学時代のゼミの後輩だったんですよね。その繋がりで、コラボのお話をいただいたのが最初だったと思います。
元川 そうですね。しっかりお付き合いさせていただくようになったのは、大学院時代、僕が博士で彼女がマスターの時ですね。サブゼミの後輩としてすごく良くしてもらっていた先輩から連絡が来て。「コーヒーやってるんですよね、海ノ向こうというところで働いてるので、手助けしてあげてください」と言われて、自分たちよりよっぽど大きい会社に何ができるんだろうと思いながら、一応連絡したのが始まりです。
宮﨑 それで一度会社に来ていただいて。
元川 そうですね。実はその2年前ぐらいにも、全く別件で一度会社に伺っているんですよ。あれはNGOかNPOの方で、ラオスで医療活動をされている方の繋がりで、ラオスの豆を売って寄付しようという話があって、その時はレストラン(OyOy:四条烏丸にある坂ノ途中がの飲食店)の方に伺いました。ご飯を食べさせてもらって、美味しいなと思いながら帰ったのを覚えています。
宮﨑 ありがとうございます。私が海ノ向こうコーヒーに入るより前からの繋がりだったんですね。
元川 コロナ前かコロナ中か、どちらかだったと思います。
藤原 レストランがオープンしたのがちょうどコロナと同じ時期なので、きっとコロナ中ですね。
ラオスでの事業について
藤原 元川さんは、ラオスに実際に住んでいらっしゃるわけですが、現地ではどういったことを具体的にされているんでしょうか。
元川 基本的には、日本では株式会社ルララオという会社を経営していて、ラオスではルララオコーヒーという屋号で、パクソンとシェンクワンをメインに農園を運営しています。あとはルアンパバーンで店舗を運営しています。
藤原 ルアンパバーンの店舗はカフェですか。
元川 カフェとレストランですね。日本食とサンドイッチなどを販売しています。
藤原 実は収録前に、私がラオスで唯一行ったことがあるコーヒー屋さんが、メコン川のほとりにあるサフロンコーヒーさんだったという話をしていたんです。
元川 サフロンさんとはご近所です。徒歩圏内で、ラオス、特にルアンパバーンといえばサフロンというイメージがありますね。彼らが一番初めにちゃんとしたコーヒー屋さんを始めて、そこから広がっていったのかなと思っています。
宮﨑 私もプロジェクトで何ヶ月かに1回ラオスに行くことがあって、そのたびに元川さんのお店にお邪魔していました。いいお店です。
藤原 店舗は何店舗になるんでしたっけ。
元川 建物としては2店舗で、1つが一番大きな店舗で、1階がレストラン、2階がカフェです。元々ビエンチャンにもカフェがあったんですが、閉めてその機能を全てそちらに移して、スタッフもビエンチャンから来て新しくオープンした、という形になっています。
藤原 ロースタリー、農園運営、カフェという形は、ラオスや東南アジアでは他にも多いんでしょうか。
元川 はい、多いと思います。生産国だとコーヒー栽培が身近なので、農園からカフェまで一貫してやっているところはいくつもあると思います。
元々カフェをやるつもりは一切なかったんです。農園だけでやっていきたかったんですが、収穫期とそれ以外の時期で仕事の量に差があって、土の入れ替えなどはあるものの毎日忙しいわけではない。雨季になると山の上に行けないこともあるので、それならカフェをやろうかな、というぐらいの気持ちで始めました。
藤原 それが、始めてみると意外と大変だったと。
元川 カフェ業は本当に大変です。できることならやりたくないぐらいですが、生豆をロースターさんや海ノ向こうコーヒーさんに卸させてもらっていても、フィードバックはカフェの方が早いんですよね。お客さんがどう感じているかがダイレクトに見える。自分が焙煎して抽出して出して、すぐに「あ、これは来年もできるな」「これはあまり望まれてないな」と分かるのは、カフェだからこそだと思っています。
藤原 それが続ける意味にもなっているんですね。ラオスの北・南部の全てのコーヒーがそこで味わえるということでしょうか。
元川 基本的には自分たちの農園で作ったものか、提携しているパートナーと一緒に作ったものだけを販売しています。

ラオスに行った経緯 ― 社会学者からコーヒー農家へ
藤原 そもそも、なぜラオスに行かれたのかというところから伺いたいです。
元川 ラオスに行き始めたのは大学院生になってからで、たまたまなんです。本当はミャンマーの研究をやりたかったんですが、指導教官から「情勢が安定していても将来どうなるか分からないから」と言われて考えている時に、研究室に「国が決まってない人はダーツを投げる」という面白い習わしがあって。ミャンマーの方向に目を閉じて投げたら、ラオスに当たったんです。
藤原 惜しい、近くまで行ったじゃないですか(笑)
元川 そんな感じでラオスが始まりました。大学生の頃からコーヒーが好きで、生産を見たことがなかったのもあって、行き始めました。研究とコーヒーを見に行くのがどっちがついでか分からないような感じでした。通っているうちに、友達や知り合いが南部に農園を持ち始めて、「この土地、コーヒーをやめるから何かやらない」と提案されて、土地を買った、というのが始まりで、そこからコーヒー生産を始めました。10年前ぐらいですね。
藤原 元々は何の研究をされていたんですか。
元川 社会学者でした。ラオス専門の社会学者で、ラオス人が世の中に対してどう考えているのか、その考えに至るまでの個人的な背景、収入や職業、出身地が人々の思想にどう影響を与えているのか、特に子どもの教育の選択にどう影響するのかを、インタビューやビッグデータの統計分析をしながら研究していました。農業をしている人、コーヒーを作っている人にも、理由をつけてよく話を聞きに行っていましたね。
藤原 そこから南部にコーヒー農園を買われて。北部に行かれたのは、また別の理由があったんですか。
元川 その後、JICAの青年海外協力隊に参加したことがきっかけです。ラオスにしか行きませんと言って参加し、南部のコーヒー生産地での募集に応募しました。そこにいた同期隊員が北部のシェンクワンに赴任することになっていて。「じゃあそこで農園やろうよ」という感じで一緒に始めました。
ラオス南部と北部の違い ― 社会学的な視点から
藤原 南部と北部って、コーヒーの生産地としての違いとか、もしくはそこに住んでいる人たち、民族が違ったりするかもしれないので、ぜひ社会学的な視点でも教えていただきたいんですけれども、それぞれお願いできますか。
元川 基本的にはラオ族なので、人間としてはほとんど一緒ですね。ラオス人という括りでは一緒で、ただやっぱり南部の方が土地が豊かです。使い倒してるんですけど、それでもまだまだこの土の栄養素っていうのは良くて。北部は逆に言うと山岳地帯っていうのもあるので、おそらくですけど、焼畑をずっとし続けて移動し続ける民族が多いんですね。最近は定住してるんですけど、昔は焼いて移動して、焼いて移動して、というのが定住することによって毎年同じところで焼いて何かを作る、ということになると栄養が足りなくなって、本当に草も生えないような土地っていうのが北部なのかなという感じですね。
藤原 そのような北部の環境でコーヒー栽培をするってすごく大変だったんじゃないですか。
元川 そうですね。なので、ヨーロッパ系の団体とのプロジェクトではあったんですけど、森林に戻しながらコーヒーを作っていくというプロジェクトを一緒にしていたりします。一度耕して、ディスクローラーとかでも耕してから3年の豆科の植物を植えて、1年のうちに伸びてきたらカットして土に戻す、というのを何年も繰り返しながら少しずつ良くしていく、というのを続けてやってますし、今でもそれでもまだ足りないですね。本当に1年で土が1cmとか2cmしかできないので、下の方はまだまだ硬い土だったり、栄養も届かないようなところだったりするので、コーヒーの根が張るところまで到達するにはまだまだ時間がかかるかなという感じです。
藤原 まずは土台をいかに豊かにしていくか?を北部の農園では注力してらっしゃるということですね。
元川 そうですね。真っ新なところでも生産はできているので、それでも栄養素が足りない分、それでもチェリーはなってきますし、それも販売していかないと人も雇えないという部分はあるので、それを頑張って精製してどう美味しくして販売していくかをやっています、今は。土の部分はすぐには変わらないので、どちらかというと精製・発酵の方に焦点を当てて、できるだけいいものを作ろうと思ってやっています。
藤原 南部はどうでしょうか。また違うフェーズなんでしょうか。
元川 南部はですね、何をやっても美味しいというのはあってですね、正直のところ。同じ苗を南部で作って北部に移して植えたりしてるんですけど、南部はおそらく微生物も土も気候もいいですし、最近ちょっと雨が降りすぎな気もしますけど、ラオスらしい味というか、ティピカでもやっぱり1番美味しいのは南部のティピカです。自分たちの農園、ちょっと山奥にあって不便ではあるんですけど、そこがやっぱり1番かなと思っていて、何もしなくても美味しい。ただ、もうちょっと管理したらもうちょっと美味しくなるんじゃないかな、というのでやっています。

焼畑農業と森林保全の課題
藤原 宮﨑さん、ラオスの北部といえば私よ、というぐらい海ノ向こうコーヒーでは北部に行かれてると思うんですけれど、その北部の生産事情みたいなところでは、お話を聞いててそうだなって思える部分は多いですか。
宮﨑 そうですね。焼畑で土の栄養が足りなくなって山がはげてたりするのを、行くたびに目にします。町から農家さんが住んでいる村まで行く間にも、結構そのハゲ山をたくさん見ることで、なんとも言えない気持ちに毎回なります。あと、元川さんがおっしゃったように、定住してるから毎年同じところを焼いて、お米を作るために焼いたり、家畜の草を育てるために焼いたり、というのを農家のおばさんたちからよく聞きます。
藤原 そこに住んでらっしゃる方は、それに対してどう考えてらっしゃるんですか。仕方ないという思いなのか、どうにかしたいと思ってるんだけどその方法が分からないのか。
宮﨑 自然環境や森自体は村の人たちも大切だという認識はあるみたいです。森がないと気温が変わったりするし、いろんな動物がいなくなったりするしという意味では自分たちも感じてはいるらしいんですけど、やっぱり生活のために焼畑をして米や草を作ることが必要でやる、という状況が多いのかなという感じがします。
藤原 なるほど。元川さんも同じようなご意見でしょうか。
元川 そうですね。分かっているのか分かっていないのかは分からないですけど、まあでもやるしかないんだと思うんですよね。彼らも生活がありますし、僕らも別にそれを止める権利はないので。政府は毎年禁止だと発表しているけれど、それを保証するわけでもないですし。分かっててやってるんだったら、悲しいですよね、それしかないっていうのは。
藤原 ラオスの中でも民族や村によるのかもしれないですが、シャーマンがいるようなアニミズムって、森の中に精霊がいるという信仰だと思うのですが、元々は森と共に生きているという考え方ですよね。最初、海ノ向こうコーヒーが関わりをもったラオスの村でもその考えを持たれていました。一方で焼畑農業がある。では、森の中でできる農産物は何だっけ?コーヒーはどうだろう?というところでアグロフォレストリーの話もしたわけですが、実際現地の人たちから見ると、このアプローチはどう写っているのでしょうか。
元川 これってすごい上流から下流までの話で、(立場によって)意見が分かれるのかなとは思っています。ルララオコーヒーとしては上流から下流まで全てやっていて、上流の立場としては、それって下流のせいじゃないかと思うんですね。下流の人からすると、いやいや、結局価格の話になってくると思うんですよね。森を守るためにコーヒーをやりましょうと言っても、植えてから3年ぐらいは収穫できるまでかかるですし、そこは誰が保証するのかというと誰もできないわけで、できたものをロースターが高く買うのかというと、高くは買わないですよね。特に日本の市場はすごい厳しいなと思っていて、注文はすごく細かいし、結構厄介だなというのはありますし、ただカフェをやってる側からすると、いやいやもっと下げてくれよと思うこともあるので、すごい葛藤があるなと思ってます。

ビジネスモデルと収入源の多様化
藤原 そういう意味では、コーヒーは植えてから数年かかるし、作ったもののそんなにお金にならないので、別の収入源を増やそうという考え方もあると思います。その辺りは実際に何かやられてるんですか?野菜を作ってみて、売ってみて、とか。
元川 結構、アグロフォレストリーで、シェードツリーとして他の木を植えて、実験でやってたのは栗の木を植えてみたりとか。バナナはよくあると思うんですけど、それをするとコーヒーの品質もそこまで実がならなかったりするので難しいなと思ってますし、あとは家畜を飼ったりというところは多いですね。たまに木と木の間で野菜を植えてる人もいるんですけど、それって収穫しづらくないのかなとシンプルに思ったりしています。
藤原 なるほど。これは、ルララオさん自身でやってることもあるんでしょうか。
元川 そうですね。バナナを植えて売ったらとか、パッションフルーツの木とか、シェードがないよりはいいでしょうというので、売れそうなものを植えてよって言って植えたりはしてるんですけど、じゃあそれをどこに売っていくのか。少量ならマーケットに持っていって売るとかできますけど、それが何百kg、何tでできたら、売りさばく先がどこにあるんだろう、と。アグロフォレストリーとして他の作物と一緒にやる、というのは理論的にはそうなんですけど、その売り先まで考えて一緒にやっていかないと厳しいと思っているので、そこまではうちは押していないですね。そこまでの保証はやっぱり持てないので。
元川 まあ、できるだけ高く買ってあげるのが1番かなと思っていて、チェリーなり豆なり、それは本当にガチンコの話し合いになるんですけど、ちょっとでもいいものを持ってきたら上乗せして買うからとか、その分未熟豆が混じっていたら買わないよとか、ちゃんとやってくると毎年高く買うから、みたいな話し合いはよくしています。
藤原 それって南部の農家さんと北部の農家さんで(商売や交渉の)アプローチは違うんですか。農家さんの、地域による性格みたいなことはあるんですか。
元川 正直、南部はもうすれにすれてるので、良かろうが悪かろうがどんどん値上がりしていくという謎の地域でして。品質がどうこうということではないんですよね。上に中国、右にベトナム、左には世界一生豆を高く買う会社がいて、そこら辺がどんどん悪いものも高く買っていくせいで、真剣に作らなくても売れてしまうというのがここ5年ぐらいですかね。北部に関しては最近ようやくちゃんと始めたというところが多いので、まだコーヒーチェリーは赤いのを取るものだよね、という認識が広がっているのかなとは思います、南部より。
藤原 なるほど。南部の農家さんは、5年前はそうではなかったから、元々はそういう意識はあったけども、一時的に変わってしまっているということですか。
元川 いや、どちらかというと、価格が、チェリーが3倍、4倍ぐらいになっているので、品質を気にせず買うお客さんが増えて、より悪くなっているんじゃないかなという感じはします。性格的な部分で言うと、ラオスの人は、よく言うとのんびりしていて、そんなにガツガツしない民族ではあるんですけど、悪く言うと頑張らないので、やっぱりすごく豊かなんですよね。緑が豊かで、餓死で人が死んだという経験がない国で、どこかに行けば必ず食べ物があるという国なので、死なないのでそこまで頑張らない、というのが国民性なのかなと思います。

地域性と民族の話
藤原 例えばですが、関西ではお金の話をストレートにするけど、関東ではそれを話すのはちょっと憚られる、みたいなのがあると思います。というのも、私は今関東にいる関西人なんですけど、そう感じることが最近もあって。昨日、駐輪場に自転車を置いていたら撤去されて、返却してもらうのに5,000円もかかったんです。関西人の性からしたら「5,000円も払わなあかんかった!」と、つい話をしたくなるんですけど、それを関東の人に直接的に言うと「ちょっと下品ね」みたいな感じになるので「自転車を取られたんです。それでお金を払ったんです」ぐらいのトーンで話をします。笑 一方で(本社が京都の)会社の人には「5,000円もかかってん!高いやろう…」という話し方になる。同じ話題でも相手(の居住地域)によって言い方を変えるエピソードがあったので、ラオスの人も南部と北部で性格や物事の捉え方が違うのかなと思って聞きました。笑
元川 それに関して言うと、南部の人はビジネス気質が強いですね。本当に物事をストレートに話しますし、いくらいくらというのもすごく言いますし、買うか買わないか迷っていると、じゃあ他の人に売ったから、とか。どちらかというと日本で言うと大阪っぽいというか、かなりストレートに物事を言う民族です。逆に北部は、特にルアンパバーンなんかそうですけど、何を言ってるか分からないぐらい遠回しに話すので、何の話をしているんだろうな、みたいな。話しながら2時間ぐらいしてようやく出発点に戻ってくる、というのは民族的にはそうかもしれないです、本当に。話すスピードも全然違うので、大阪京都ぐらいの差があるのかなという感じですね。
藤原 それは大阪の人は早いけど京都はまだゆっくり、みたいなことですか。
元川 京都はゆっくり喋るイメージがありますし、大阪の人みたいにズバズバ言うことはないですし、逆に京都でズバズバ言うと「この人下品やな、失礼やな」みたいな印象があるのかなみたいな。でも大阪で言うと、京都の人が喋ってると「何ちんたら喋ってんのやろな」とお互いがそう思う、というのはよくある話で、ラオスでもそうかなという感じですね。笑
民族の違いということでいうと、実は私はほとんど関わりがなくて、うちではモン族の人を雇ったことってほとんどないんです。居住地域が違うからか、カム族の人が多いですね。カム族もほぼラオ族みたいな感じで生活しているので、現代社会ではもうほとんど分からないですかね。お祭りの時だけ衣装が違うので「あ、この人カムだったんだ」とか、モン族は顔を見たら分かるので「やっぱこの人モンだよね」とか、それぐらいですかね。基本的にラオス語はみんな喋りますし、自分たちのラオス語だと(訛りなどは)そこまで分からないというか。なので何族と言うシーンはわざわざないですね。イベントがある時にちょっと休みますと言い出したら「お前何族なんや」「あ、そうです」ぐらいの感覚です。
宮﨑 プロジェクトをやっていた村で、複数の民族が1つの村に混在しているところがあって、私は区別ができなかったんですけど、言葉がやっぱり違ってて、モン族からラオ語に通訳してもらって、それをさらに英語に通訳してもらう、というワークショップをやったこともありました。あと、モン族の人は毎回朝ご飯にスープを食べる、というようなことを言っていて、食文化も違うらしいです。
藤原 面白いですね。せっかく元川さんも宮﨑さんもラオスに詳しいので、現地の人たちの性格とか生活とか、コーヒーを離れてよりラオスとして親しんでもらえるエピソードがあったらいいなと思って質問しています。
元川 ラオスには民族が45ありますからね。
宮﨑 本当にこんなにたくさんあって、モン族とカム族が一緒に住んでる村もあったりして。昔はその民族同士で絶対結婚しないといけなかったけど、今はどうなの、と聞いてみたら、今はもうミックスだという感じで言ってて、本当に混じってきているみたいです。
元川 そのお祭りには絶対別の民族のお祭りには参加しないけど、その後の飲み会は絶対参加すると言っていました。
宮﨑 そうそう、飲み会はみんな全員参加、みたいな感じです。昼からずっと飲んでる。
藤原 お祭りには参加しないというのは、やっぱり触れてはいけない領域ということなんですか。
元川 ちょっと違うんじゃないですかね。しきたりもあるでしょうし、精霊信仰なのか仏教なのかで全然違いますし、そこは興味がないんじゃないですかね、あんまり。
藤原 排他的というよりかは、なんかやってんねんな、ぐらいの感じで。
宮﨑 そんな感じの印象です。喧嘩しているみたいな印象はあまり受けなくて、うまいこと共存している印象です。民族が2つ混在しているような村だったら、よりうまく共存し合っていると感じます。
藤原 ありがとうございます。少しでもラオスという国に興味を持ってもらえたなと思います。では話をコーヒーの方に戻しますね。

アイデアと今後の展望 ― アジア展開
藤原 元川さんはすごいアイデアマンだと聞いています。今考えてらっしゃる構想やアイデアをどんどん話していただきたいなと思ってたので、ぜひ教えてください。
元川 アイデアマンというか、考えるのは楽しいっていうのはありますけど。今思っているのは、ラオスではある程度継続的にできるというのはできたので、次はいろんな会社やプロジェクトと、もう少し長い目で見たラオス南部・北部でのプロジェクトができたらいいなというのがあって。それ以外では、実際今年の年末頃から始まる収穫期には、ベトナム、マレーシア、タイと現地のパートナーと組んで、その国の豆を日本に届けるというのを始めようかなと思っています。
藤原 マレーシアにもコーヒーがあるんですか。
元川 1番有名なのはマレーシアのリベリカですね。本当に2万円とかで取引されるような、世界大会で使われた豆なので、今年の4、5月頃に行っていろんなお話をしたり、一緒にやっていけませんかという動画を撮ったりしました。ベトナムも、実は昨日までORIGAMI CUPのラオス大会をうちで主催していて、そこにインドやベトナムの生産者さんも来てくれて、アジアというところに焦点を当てて一緒にやっていかないかという話をしていました。ただ、ルララオコーヒーとしては売らない予定です。ルララオコーヒーで売ると意味不明になるので別の名前をつけるとは思うんですけど、僕が決めているルールとして、絶対自分が精製にタッチしたものだけを販売するというルールにしているので、輸入して売るということはしなくて、一緒に絶対農園に行って一緒にプロセスを関り、それを売っていく。となると範囲的には東南アジアだけ、広げてもアジアなのかなというので、アジアの豆をどんどん日本や世界中に届けていけたらなと思っています。
藤原 では今回のパートナーも、共につくりあげていくことができる方とご縁があって出会われたということなんですね。ベトナムとタイはどの辺りなんですか。
元川 ダラットとか、その南の方ですね。そこまで南部ではないんですけど、アラビカです。ただロブスタも面白いなと思っていて、ロブスタ、リベリカ、エクセルサといろんな品種があるので、インドネシアはエクセルサの農園から技術指導で来てくださいというオファーがあるので一緒にやってもいいなと思ってるんですけど、インドネシアは遠いなと。笑 でも、インドネシアのいろんな島でやってみたいなと思っています。インドネシアは収穫が大体2回あるので時期をずらしていけるかなとか。タイ・ラオス・ベトナムは収穫期が丸かぶりなので、このタイムマネジメントをどうしようかとか、そういう話も込みで考えていかないと、1人では何もできないので、いろんなところに巻き込んで仕事していくしかできないので。そういうのを目指しているという感じですかね。
藤原 ありがとうございます。ぜひ巻き込んでください。
元川 ありがとうございます。面白いところの豆だったら売れると思うんですよね。日本でいろんなコーヒー屋さんに行きますけど、やっぱり国や品種が偏っているというか。それに惹かれて来ているお客さんも実際多いのかなと思っているので、アジアはこれからもまだまだ伸びるんじゃないかなと思ってます。
藤原 それはもう10年前からアジアのコーヒーを扱ってる身としては、もっともっと魅力を伝えていただきたいなと思います。私、1番最初、ラオスの豆をリュックに詰めて日本で売り歩いていたんですよね。「ラオスいりませんか」と言って「ラオス?どこよ?」と言われていたのが、今はもうラオスがちゃんと選択肢に入っていることが、めっちゃ嬉しいなって思うんです。
元川 いや、本当ですね。海ノ向こうコーヒーさんが作ってきた土台を僕たちは使わせてもらっているだけなので、本当に。

今年のクロップについて
藤原 今年のニュークロップ、もうそろそろ入りますか、ラオスは。
宮﨑 もうそろそろ、今、神戸の港に着いて通関待ちです。もうすぐ切れるかなと思います。
元川 この節は本当に毎年ありがとうございます。今年は特に色々大変な感じで。現地の取引とやってると、送る、送らない、乾いた、乾いてない、もうむちゃくちゃなんですよね。「送りました」と言って、送っていないとか、そういうことが全然普通にあって、本当にお騒がせしました。
藤原 何件ぐらいの取りまとめをされているんですか、元川さんの方で。
元川 パクソンには自社の農園があって、それ以外だとセコンとサラワンに提携農園があります。ただそのメインのところは4つなんですけど、その周りに何十って農家があって、精製は全部うちでやることになっています。定期的に毎年というのは各件に5箇所ずつぐらいあって、入れ替わりも激しいので、1番いいところ、1番いい値段で買ってくれるところにチェリーを売ったりということがあります。豆にしてもそうですね。結構50%先払い、50%後払いというところが多いらしくて、うちはキャッシュで100%払うので、優先的にうちに運んできてくれるようにはなっていますね。
藤原 50%後払いっていうのは、いつ発生するものなのですか?
元川 分からないですよ。豆ができて送って届いたら50%、みたいに言っているところがあって、それは半年後とかに入ってくるので、だいぶ遅いですよね。自分も農家側なので、豆を作って、売り先を見つけて、日本に送って、入金されるのは半年後とか。下手したら半年以上かかるので、キャッシュフローをなんとかしたいというのもあります。前受け、前払いで30%、40%支払いがあれば割引きします、というビジネスモデルにしていかないと成り立たなくなってくるんじゃないかな、というのは最近すごく思いますね。そもそもよく考えたらこのビジネスモデルっておかしくないかと思っています。車を買う時に、車が到着してからお金を払わないですよね。ディーラーに行って「その車お願いします」と言って作ってもらってる時にお金を払うと思うんですよね。コーヒーも一緒じゃないかなと思ったりはします。前払いしてくれるところも最近増えてきたので、ありがたいっちゃありがたいですね。
藤原 農産物ということで、品質がどう上がってくるか分からないというのが、車のような工業製品と違う難しさなんでしょうね。
元川 そうですね。ただ、農家にお金を払えないともう作れなくなるので、そうなると最終的に困るのはロースターの方じゃないのかなと思ったりはするんですけど、世界中にいくつも農園があるので、そこを統一するのは難しいでしょうし、すごく葛藤のある部分ですね、ここ最近は。
藤原 ありがとうございます。色々あって、ようやく日本に到着した今年のクロップなんですけれども、今回どういうところを気にして作られたのか、教えてください。
元川 今年はできるだけ丁寧に作っているので、ちょっとでもスコアが上がるように作っていますし、毎年反省点が出てくるので、そこを改善しようとしています。特に今年から活性水分を管理しようとして、今まで水分値しか見ていなかったんですけど、やっぱりブレが出てくるので、活性水分を測ってコントロールしようというのが今年のテーマですね。発酵や乾燥の終了時をどこにするかというのを、今年から気にするようにしています。今年日本に出したのは9種類ですかね。南部のものもあれば北部のものもあって、ゲイシャは北部、ティピカとイエローカトゥーラは南部です。今年はJAVAが全滅して、全然取れなくて、やめたというのがありました。JAVAのナチュラルやアナエロビックナチュラルはすごい人気だったんですけど、今年は雨の関係でうまくいかず断念しました。JAVAは標高の低い1,000から1,100mぐらいのところでやっていて、去年も怪しかったんですけど今年はダメで、違うところに植え直すかどうしようかなと考えています。おそらく雨が降りすぎて木も腐ったやつが出てきたので、チェリーがすごく落ちてしまって。難しいですね、本当に農作業は。変な時期に雨が降るのが普通になってきたので、それが普通なのかなと思ったりはしていますが、そういうのもあって農園を分散させているので、1つ潰れても他がある、というのは助かっています。

今後目指していること
藤原 これからのルララオさんがどうなっていくのか、最後に伺いたいです。
元川 お店は正直もう疲れたというのがあって。本当は各国で出したいんですけど、コストがすごいかかりますし、それだったらいい設備を整えた農園の方が最近は面白いかなと。ありがたいことに、ルララオコーヒーだから買ってくれるお客さんも増えましたし、元川だから買うお客さんもいてくれるので、そういうところに細く届けながらちょっとずつ拡大できたらいいなというのはありますね。あとは海ノ向こうコーヒーさんにもたくさん買ってもらって、色々広げてもらえたらなと思っています。将来的には、ルララオを買い取ってもらうぐらいまで。笑
藤原 これを聞いているみなさん!必ず今年のニュークロップを買ってください。笑
元川 カレントのクロップはカティモールのウォッシュしかないので、別の品種もぜひ、頑張って発送できればいいのかなと思っています。基本的に今目指しているのは、アジアのコーヒー豆が主導権を握るぐらいになればいいということですね。個人的にはエチオピアがすごい好きなんですけど、それでもアジアの豆がもっともっと飲まれるようになって、どの店でもバランスよく置かれる、ラオス以外の国でももうちょっとラインナップに入ってくるような世界になればいいなと思っています。
藤原 ラオスはぜひ定番に入れてもらいたいですね。
元川 そうですね。ラオスも必ず置いてくれるぐらいアジアが盛り上がればいいなと思っています。
宮﨑 嬉しいですね。我々もアジアをたくさん扱っているので、その願いはあります。
藤原 コーヒーを通してこういうことがしたい、みたいなのはあるんですか?元々社会学者でいらっしゃったので、そういうところも強いのかなと思ったのですが、どうでしょう。
元川 コーヒーを通してというよりは、ただただいろんなところに行きたいというのがあるかもしれないですね。研究、アカデミックなものはもうちょっと落ち着いたら色々やろうかなと思っていますが、それよりも長らくラオスにいたという側面は強いので、もう少し視野を広く持ちたいというのもあって。アジアだけでもいろんな国に行って、農園を見るなり、お店を見るなり、いろんな人から学ぶなりというのを続けていけたらいいなと思っています。本当はコーヒー以外で言うとカカオもやりたいですけど、チョコレートとコーヒーって相性いいですしね。僕、コーヒーよりチョコレートの方が好きなので、チョコレートを作りたいなと思ったりします。ラオスにもカカオはあります。少量ですけどね。マレーシアもリベリカと一緒にカカオを作っていたりしたので、そういうところでも作れるんだったらいいなというのは思ったりします。
チョコレートとコーヒーのペアリング
藤原 前回のダラッティさんの話ですけど、農園で生産する中で、いろんなグレードのものができるじゃないですか。欠け豆や割れ豆も出てしまう。その出口として、ベトナムの場合はチョコレートにそのコーヒーを混ぜる、またはチョコレートとコーヒーのペアリングを作ってみたい、というようなことを考えていると教えていただいたんですけれども、そういうのは検討されていますか?
元川 その技術があるかどうかですね、ラオスに。技術があるのか?製造する場所があるのか?というところがまずラオスでは厳しいポイントですね。チョコレートを作っているところはあるんですけど、おそらくその規模がベトナムとはやっぱり違うので、そこがラオスの難しいところではありますね。ラオスでは何かしたいと思ってもすぐにはできないというのが、難しさでもありますし、楽しさでもあるのかなと思っています。割れ豆や欠け豆は結構ドリンクとして提供したりしているんです、店舗で。焙煎がちょっと難しいというのはあるんですけど、味わい的にそこまで悪いものじゃないんじゃないかなというのは実は思っていて。5,000円や3,000円とかするようなカップじゃないので、そこまで影響しないかなと思っています。あとはコールドブリューとかでも提供してますね。

クロージング
藤原 ありがとうございます。色々お話していただいて。最後にPRですね。ニュークロップ、8月中には販売できるかなと思うので、皆さん是非ご購入ください!
元川 はい、お願いします。
藤原 ありがとうございます。では、本日はこの辺で失礼します。
宮﨑 失礼します。ありがとうございました。
元川 ありがとうございました。


