
今回のスピーカー

海ノ向こうコーヒー
生豆営業担当
藤原
滋賀県出身。通称まりおさん。 海ノ向こうコーヒー最古参のスタッフで、「おかん」ぽいと言われる。 東京在住ながら、ポッドキャストでは誰よりも流暢な関西弁を喋る。 コーヒーのソムリエとも言える、Qグレーダー保持者。

海ノ向こうコーヒー
未来づくり推進室
田才
新潟県出身。これまでに国連職員やNGO職員としてザンビア、パラグアイ、スーダン、ラオスなどに駐在。現在は東京を拠点に世界中のコーヒー産地を飛び回る。ニュージーランドにバリスタ留学をした経験もあり、コーヒーが大好き。

Value Way株式会社
代表
八木さん
学生時代、母の喫茶店でコーヒーに親しみ、2005年にRIO COFFEEを創業。神戸芦屋・北野で店舗を運営し、品評会や日本スペシャルティコーヒー協会でも活動。「2050年問題」に危機感を抱き、環境価値を生む「Value Way」を始動。
オープニング
藤原 はい、本日のポッドキャストを始めます。よろしくお願いします。
田才、八木 よろしくお願いします。
藤原 今日は藤原に加えて、海ノ向こうコーヒーの未来づくり推進室から田才さんに来ていただきました。
田才 はい、よろしくお願いします。
藤原 よろしくお願いします。そしてもう1人。今回はゲストがいらっしゃいますので、早速で申し訳ないのですが、ご本人から自己紹介をお願いしてよろしいでしょうか、八木さん。
八木 あ、はい。八木と申します。Value Way株式会社という、コーヒーのGXのスタートアップをやっておりまして、普段はRIO COFFEEの店主としても活動しております。よろしくお願いします。
藤原 お願いします。今回、八木さんに来ていただいたのは、ウガンダの脱炭素コーヒーの取り扱いを私たちも6月から始めたのですが、商品としてテキストだけで伝えるのは難しいなというところがありまして。実際に活動されている八木に来ていただいて、どういうことをしているのか、そもそも脱炭素とは何なのかというところをお話しいただきながら、商品にもう少し親しみを持ってもらえたらなと思い、この場を設けさせていただいたという背景です。
実は私、八木さんのお名前を2017年から拝見していて。収録前にもご挨拶していたのですが、当時はラオスのコーヒー豆の評価をいただき、ありがとうございました。
八木 いえいえ、とんでもございません。こちらこそ、あのきっかけがなかったらラオスに行くことがなかったと思いますし、本当に貴重な経験をさせていただきました。
藤原 まだ右も左も分からず、海ノ向こうコーヒーがどうなるかも分からないような、本当に一番最初に生豆を扱うかどうかというタイミングで、八木さんに来ていただいたのがきっかけでした。私自身がご挨拶するのは今回が初めてなのですが、実は田才さんは、もう八木とは長らくやり取りをされているんですよね。この1年ぐらいでしょうか。
田才 そうですね。今回テーマにしているウガンダの脱炭素の件もそうですし、以前ポッドキャストでもお話ししたグローバルサウスの経産省の案件のほうでも、八木さんにLCA分析(ライフサイクルアセスメント)のところでご協力いただいたりと、色々と接点があります。

Value WayとAFDXプロジェクト概要
藤原 今回のプロジェクトは、ウガンダがきっかけになるんですかね。
田才 そうですね。そこは八木さん(Value Wayさん)が、AFDXの枠組みで採択されまして。それが経産省さんの助成金のスキームでもあって、八木さんの会社が受託されたところに、坂ノ途中(海ノ向こうコーヒー)としてはマーケット接続の部分をメインで一緒に取り組ませていただいた、という形です。なので、メインのところは八木さんから具体的にどんな活動をされていたかお話しいただくのがいいかなと思います。
八木 そうですね、プロジェクトの背景みたいな部分のお話ですかね。改めまして、バリューウェイの八木です。私自身はコーヒー産業に20年ほど携わる中で、いわゆる「スペシャルティコーヒー」は「From Seed To Cup」という表現をされることがありますが、このポッドキャストを聞いているような方はご存知かなと思うのですが、そのSeedの部分について、僕自身は全然分かっていないなと感じていて、10年ほど前からいろいろな生産国に行くようになりました。
そんな中で、特に2012年ぐらいから、いわゆる気候変動によってコーヒーが採れなくなるのではないか、日本でいう「2050年問題」のようなものが言われ始めていて、このクライメイトチェンジへの対応・対策を産業としてどうするのか、というのがずっと気になっていました。ただ、いちロースターとして何もできないよなという状況の中、2019〜2020年、コロナ前ぐらいですかね、そのあたりで、どうやら温室効果ガスを見える化したり削減したりすることで、お金のやり取り、排出権のようなものがあって、コーヒーの流通を通じて削減ができるらしい、という情報を知りまして。それから独学で調べていき、Value Wayを2023年に起業したという流れです。
その中で今回のウガンダの件というのは、正式名称は記憶が定かではないのですが、「アフリカ市場活力化」なんとかという、通称AFDXという枠組みですね。
田才 そうですね、みんなAFDXとしか把握していないと思います。笑
八木 その枠組みに応募して採択いただいて、去年、2025年7月から今年3月までの期間、1年間調査をしてきたという状況です。
藤原 なるほど。このAFDXというのは、ウガンダに特化したプロジェクトなんですか。
八木 枠組み自体は、アフリカ諸国に対するDXを進めていくというもので、参加者はエチオピアの方やウガンダの方、エジプトでやっている方、ガーナの方など、アフリカ全土でいろいろな地域で活動されている方々がいる枠組みです。その中で、我々はウガンダに元々在住していて企業経験のある共通の知り合いがいたので、その方とお話をする中で、僕自身はウガンダには行ったことがなかったのですが、そのネットワークを頼りに一度出してみましょうかという形で応募したところ、採択いただいたのがきっかけです。
藤原 そうすると、今回は約1年間、調査という形で関わられたということですね。
八木 そうですね。何を調査したかというと、大きく2つあります。1つは温室効果ガスの調査で、コーヒーのサプライチェーンの中でどれくらい排出しているかを実際に調べるというものです。もう1つは削減、あるいは除去のほうで、「ゼロにする」のではなく「マイナス側を作る」取り組みを、コーヒーのサプライチェーンの中で行いました。具体的には、コーヒーのハスクを原料として炭にし、炭化炉を設置してその炭をまた土壌に戻す、ということを行いました。
バイオ炭とは何か:カーボンニュートラルとマイナス排出の仕組み
藤原 なるほど。よく一般的にも「炭」とか「バイオ炭」と言いますね。その中で、これは削減ではなくてマイナスとおっしゃっているのは、もう少し言うとどういうことなのでしょうか。
八木 そうですよね。よく聞くキーワードで「カーボンニュートラル」があると思うのですが、ニュートラルということはプラスマイナスゼロですよね。一方で活動をすると、基本的には必ずCO2換算でプラスの排出が出るわけです。ではどうやってニュートラルにするのかというと、逆に、活動によってマイナスになる働きもあって、そのマイナス側を組み合わせることで最終的にプラスマイナスゼロになる、という形でカーボンニュートラルが実現できます。
今回のバイオ炭は、そのマイナス側の効果があると国際的に認定されている方法論なので、実際にお金・商品として売買される手前までの実証を行った、ということです。
藤原 そのバイオ炭というのは、ハスクを燃やしたということですが、なぜそれがマイナスになるのでしょうか。

八木 そうですよね、それもまた「はてな」が出るところだと思います。僕自身もそんな感じの連続でした。まず、バイオ炭とは何かというと、有機物を加熱したもの、いわゆる熱分解(パイロリシス)によって炭になったもの全般を指します。今回、僕らもハスクで検証しましたが、パーム油の殻など、普段使われていない、あるいは別の用途で余っているようなものを資材にすればよく、木材でも構いません。
農林水産セクターは全世界の温室効果ガス排出の4分の1ほどを占めると言われていて、分かりやすい例で言うと、牛のげっぷによるメタン排出などがよく言われますが、土からも自然に、CO2換算で温室効果ガスがどんどん出ているんです。
コーヒーで馴染みがあるところで言うと、化学肥料が一番分かりやすい例で、これは石油由来なのでCO2がたくさん出ます。それが土から出ているわけですが、バイオ炭は分解しない固体の炭素なので、本来であればバイオ炭が入っていない土地から出ていくはずの温室効果ガスが、固体の炭素があることで出なくなる、という効果があることが証明されています。
なので、どれだけ出るかという元データを計算し、そこに炭素含有量などを踏まえて、どういう敷地にどれだけ投入すればどれだけのマイナス側の効果があるか(いわゆるCPR:炭素除去効果)を計算できるわけです。今回はそれを検証しました。当然、農作物なのでコーヒーの栽培にも影響しますし、一方で環境負荷にも影響が出るので、その両方の側面で実証実験を行った、ということです。
藤原 両方の側面というのは、栽培面での効果と……
八木 そうですね。効果検証は今も継続していますが、要は炭を入れるというのは土壌改良剤としての効果もあるんです。
藤原 なるほど、それで環境負荷の意味合いでもおっしゃっていたということですね。
八木 そうです。生産性が高まるという農学的な側面と、温室効果への影響という側面、この2つをバイオ炭では検証しています。
藤原 それはウガンダのコーヒー農園の一角で調査をされているということですか。
八木 そうですね。バイオ炭にもいろいろな作り方があるのですが、今回僕らがやったのは、カーボンクレジット、つまり排出権取引の対象になるようなものの効果検証です。そのためには一定規模の生産ができる必要があり、簡単に言うと、穴を掘って有機物を入れて蓋をして燃やせば農家の軒先でも炭は作れるのですが、そのやり方だと炭素含有量が不十分だったり、失敗すると灰になってしまいます。灰になってしまうと効果がないので、きちんと炭にする必要がありますし、排出権取引の対象になるためにはこういう基準を満たさないといけない、というものがあります。
それを満たす機材を設置し、加熱処理をする、という部分を今回はAFDXの予算を使って実施しました。
田才 まりおさんがまだ困惑していそうな気がするので、コーヒーをやっている人がイメージしやすいように、あえてすごく簡単に言うと、八木の説明の通りではあるのですが、コーヒーのパーチメントってあるじゃないですか。あれをバイオ炭にする取り組みは、うちでもインドネシアやラオスで元々やっていました。バイオ炭にしない場合は、そのまま燃やして処分してしまう産地も多いんです。そのままその場で燃やすと、煙が出てCO2、いわゆる温室効果ガスがもくもく出てしまいます。
これは明らかに環境に悪いと思われるかもしれませんが、そうではなく、アナエロビック・ファーメンテーション(嫌気発酵)と同じ考え方で、嫌気環境を作ってパーチメントを蒸し焼きにすると炭になるんです。それを土壌に戻すと、本来大気中に出ていくはずだったものが土の中に閉じ込められる。少なくとも一定期間は閉じ込められる。つまり、本来出ていくはずだったCO2や温室効果ガスが出ていかない、という話です。
藤原 なるほど。ありがとうございます。
八木 そうそう、そうなんです。だから、アナエロビックにすることで、燃えずに加熱だけする。空気が入らないので燃えないんですよね。ただ何百度にもなる。
藤原 そこがずっと不思議だったんです。燃えるときは酸素がいるよね、それで燃やすとCO2が出るって理科で習った気がするけど、あれ違ったかな、と思っていたんですが、今の話で、嫌気性だからそもそも酸素がなく、燃えず灰にもならず炭化する、ということですね。
八木 そうです。アナエロビックです。もちろん製造では多少のCO2は出るのですが、それもカウントした上でプラスマイナス、トータルでマイナスになる。
藤原 なるほど。それを上回る想定になる、ということですね。皆さん、伝わっていますでしょうか。私も一生懸命理解しながらにはなるのですが、お二人とも分かりやすく伝えていただいていると思います。ありがとうございます。
田才 いや、難しいですよね。目に見えないものを言語化していく作業なので、「それ本当なの?」と思われても仕方ないな、という感覚はあります。
八木 そうなんですよ。実際に画像や実物を見るのが一番分かりやすかったりすると思うので、言葉だけで伝えることの限界をいつも感じながらポッドキャストをやっています。
藤原 そうですね。でも、可視化が一番だとしても、読み物としてはもっと硬い文章になり、より難しく感じると思うので、その中間の媒体として、今回は言葉での説明を試みているというところです。
土壌や品質への効果とカーボンクレジットの仕組み
藤原 ウガンダで、農園というか地域で検証されているとのことですが、土壌の特性によって、結果は変わってきたりするのでしょうか。
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八木 ありがとうございます。まさにおっしゃる通りで、先ほどの2つの側面のうち、排出権取引・温室効果への影響のほうは特に気にしなくていいのですが、投入して品質が下がった、生産量が落ちた、となると誰もやらなくなってしまいます。
なので、まずは土壌の分析をして、この土壌であれば最大どれくらいまでなら大丈夫だろうという仮説を立てて投入し、実際にどうなるかを、本来は複数年かけて調査すべきところですが、今回の枠組みは短期だったので1回やったきりです。AFDXという枠組み自体は終わっていますが、カーボンニュートラルな農園にしていこうという取り組みは、今回のパートナーであるダーレー・インベストメンツも自社の取り組みとして継続的に進めています。
藤原 農家さんの立場で言うと、生産性が高まることが検証されれば「やる意味がある」となると思うのですが、もう1つ、排出権取引の文脈が農家さんにとってどういう良いことになるのか、そもそも排出権とは何なのか、というあたりを伺いたいです。
八木 ありがとうございます。まず排出権取引は、マイナスの行為を自分たちでは作れない、カーボンニュートラルができない、活動しているのでどうしてもプラスでCO2が出てしまう、という主体が、マイナス側を作った人からお金を払って買い取る、という制度です。これは民間もあれば国単位のものもあり、いろいろな排出権があります。
バイオ炭の場合、ざっくりですが、炭を1トン入れると、約2倍、つまり2トン分の削減効果があるだろうという計算があります。そして、1トンあたりどれくらいの排出権の価値があるかというと、固定価格制度のようなものではなく、基本的には相対取引です。相場としては、バイオ炭は1トンあたり、大体150ドルくらいで取引されています。日本円で2万5,000円ぐらいでしょうか。100トンなら250万円、1000トンなら2,500万円という規模になり、プロジェクトとして大きくすることでビジネスとして成り立ってきます。
このお金がどこに還元されるかというと、プロジェクト・バイオ炭の排出権の権利は、それを投入した土地に帰属します。つまり農家さんの権利になります。結論から言うと、バイオ炭でちゃんとプロジェクトができれば、それがお金として農家さんに還元される、お小遣いがもらえるくらいのベネフィットができるかもしれない、というプロジェクトです。
藤原 1トン入れようと思ったら、どれくらいの土地が必要なんですか。
八木 結構必要で、そこは土地次第です。何も作っていない土地であれば作物のことを気にせず投入できますが、どこに入れるかによって、また土壌改良効果の視点も入れる必要があります。ここは本当に一律ではなく、まず土壌分析をして、というところと、収量が下がることを生産者は最も懸念するので、少しずつ試していく形になります。
藤原 それを、ウガンダのケースでどれくらいなのかを検証された(=投入量の検証)ということですね。
八木 そうですね。今、世界中のコーヒー農家で、ブラジルやコロンビア、コスタリカなど、いろいろなところでバイオ炭を入れる取り組みが少しずつ始まってきています。まだ黎明期なので、もう数年したら、こういう土壌状態ならこれくらいの投入量が最適だろう、というデファクトスタンダードのようなものがコーヒーでも出てくるのではないかと思います。
藤原 収量だけでなく、品質、味わいにも影響があるんですかね。
八木 はい、そちらのほうが僕はより注目しているところです。これはまさに坂ノ途中さん(海ノ向こうコーヒー)のほうがお詳しいと思うのですが、いわゆる炭を入れるというのは有機農法の1つですよね。最近で言うと「リジェネラティブ・アグリカルチャー」というキーワードが出てきていて、日本の農水省の「みどりの食料システム戦略」という枠組みも、今年から次のフェーズに入る中で、リジェネラティブの定義を明確にしていこうという方針になっています。その再生農法の1つに、バイオ炭があります。
何が再生かというと、炭が入ると保水性が上がりますし、多孔質構造なので空隙が多い素材、そこに微生物の棲みかになります。結果として土が良くなっていく、という効果があります。なので、どういう土地に、どういう状態で、どれくらいの品質のバイオ炭を、表面散布するのか土中に混ぜ込むのか、粒度はどれくらいの大きさかといった、まさに土壌学や植物生理、農学全般での再生農法としてのバイオ炭の効果検証を、次のステップとしてやっていきたいですね。
田才 面白いです、ありがとうございます。まさに坂ノ途中の野菜チーム側が得意かもしれないですね。
八木 日本は結構先進的というか、昔から堆肥を入れるノウハウがあるので、そのノウハウはグローバルに応用できると思います。
田才 いや、それはやりたいですね。脱炭素にも目が行きがちですが、土壌改良という点で見たときに、そこが一番生産者さんにとってはいいんじゃないかなと思います。土壌が良くなるということは、それだけ化学肥料の使用量が減ってコストが下がるとか、いろいろな直接的なメリットが農家さんに出てきます。カーボンクレジットの話はすごく長期的な話で、何年も後にならないとお金が返ってこないので、そういう長期スパンで生産者さんが考えて行動するのは難しいと思うのですが、土が良くなることについては、比較的短いスパンでちゃんとコーヒーに返ってくるので、品質も収量も良くなるというのは良い点だと思います。
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他地域への展開(グアテマラ)
藤原 これは今、ウガンダでのプロジェクトについてお話しされていましたが、他にもブラジルなどいろいろな国とおっしゃっていましたよね。八木が実際に関わられているところは他にもあるのでしょうか。
八木 ありがとうございます。本格的に関わるのはこれからで、グアテマラでプロジェクトがスタートする予定で、今、最終契約の段階です。グアテマラ全土で、バイオ炭を使った再生農法と、まず現状調査からという形で、みなさんデータがないので、データを取るところから始めましょう、というものを、早ければ今年10月からグアテマラでスタートする予定です。
田才 ちょうど4日前まで現地に行っていました。
八木 それは買い付けですか。
田才 いえ、JICAさんのプロジェクトに、コーヒーの専門家という形で入らせてもらっていて、研修をしに行ってきました。
八木 まさにJICAさんがやられている枠組みの延長線上というか、連携しながら我々がそのプロジェクトを引き継ぐような形で、グアテマラでは動いていくことになると思うので、その辺もまた情報共有しながら進められればと思います。
現場のボトルネックと関係構築
藤原 今回、新しくグアテマラもやられるということだと思うのですが、ウガンダで取り組まれていた中で、こういうところによくぶち当たる、というボトルネックのようなものがあれば、教えていただけますか。
八木 いや、この辺りはもう、田才さんが専門でしょうけれど、国際協力の枠組みだと常にあることだと思います。僕は元々、ロースターやバイヤーの立場でしか生産地と関わったことがなかったので、その立場だと僕らはあくまでお客さんなんですよね、彼らから見ると。一方で、こういうプロジェクトだと、逆に向こうがお客さんという立場になり、「何をしてくれるの?」というところから入ってきます。
すべて説明から入りますし、これはどこでもあることだと思いますが、担当者が誰かによって全く変わりますし、昨日までやると言っていたことが、担当が変わったらやらなくなる、ということも実際にありました。今回の枠組みで言うと、現在パートナーであるダーレー・インベストメンツというところと組んでいますが、実は最初に計画していた時にはこのパートナーではありませんでした。最初は別の事業者と話を詰めていたのですが、結果的に承認が下りずに、急遽ダーレー・インベストメンツに変わったりしました。その後も、炭化炉をどこに設置するか、そもそも設備がケニアにあったので、それを移送するところから始まり、計画通りにはなかなか進まず、やっと届いたと思ったら国境で足止めされたり、届いたら届いたで設置ができなかったり、と、ありとあらゆるところにボトルネックがあるのが、もうデフォルトになりますね。
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藤原 田才さんは数多くそういう経験をされていると思うので、どのように乗り越えてこられたか、ぜひ教えていただきたいです。
田才 いや、ケースバイケースですけどね。コミュニケーション頻度をできる限り上げるとか、こういうオンラインでできる時代ですが、できる限りオフラインで信頼関係を築く時間を大切にするとか、一緒に食事をするとか、そういうことですね。
八木 本当にそこですよね。
田才 結構そこかなという気がしますね。テクニック的なことよりも、どれだけ関係性を構築できるかというところなのかなと。あとは、無理なものは無理と諦める心も、どこかで持っておくことは大事だと感じています。
八木 まさに、日本の飲み会ではないですが、オンラインで10回やり取りするより、1回リアルで会って食事をしたほうが早く進む、という世界なんだろうなというのを、どこの国に行っても感じますね。
田才 本当にそうですね。1回行った時の物事の動き方と、オンラインでやり取りしている時の動き方とでは、すごく差があると思います。
藤原 ぜひグアテマラに行かれた時も、みなさんとご飯を食べて仲良くしてきてください。
八木 本当にそう思います。それがもう仕事だと思っています。先月も、結局それに尽きるなという感じでした。
Value Wayのビジョンやゴール
藤原 そういう、うまくいかないことも色々ある中で、前を向いて進んでいらっしゃると思うのですが、Value Wayさんが目指されている最終的なゴールは、どういうものなのでしょうか。
八木 ありがとうございます。正直、こうなったら理想、というゴールはあまり明確に描けていなくて、では何のためにやっているのか、モチベーションは何なのかというと、別に儲かるわけでもなく……。
なぜやっているかというと、僕は社会人になってほぼコーヒー産業で育ってきているので、コーヒーを通して社会に還元できたらいいな、という思いがあります。1杯のカップの美味しさを追求したり、1杯のカップで価値を提供するというのは素晴らしいことだと思う一方で、今、日本でも、海ノ向こうコーヒーさんの生豆を買っているお客さんはものすごくたくさんいらっしゃって、皆さんに1杯のコーヒーの価値を提供してくれるそういう人たちが、僕らがコーヒーを始めた20年ぐらい前と比べても、すごく増えてきています。
そういう意味では、僕は1杯のところではない、別のところでコーヒー産業に恩返しができたらいいな、というのがモチベーションになっています。具体的に言うと、最初に言った「From Seed To Cup」の「Seed」の部分から取ると、このコーヒーの苗、品種は皆さん分かると思うのですが、その品種の苗がどんな土地で、どんな気象条件で育って、生産者さんがどんな管理をして育ててきたのか、というプロセスは、僕自身もほとんど分かっていません。だから、ゴールとしては、それが誰にでも分かるような世界が実現できたらいいな、と思っています。
藤原 ありがとうございます。それは、私たちも考えているところですね。
田才 そうですね。細かいところで目指しているところは違うところもあるかもしれませんが、大枠で言うとやはり近いものがあるなと、いつも一緒に仕事をしながら思っています。
そういうプレイヤーがたくさん出てくることも大事かなと思っていて、この脱炭素コーヒー界隈と言っていいのか分かりませんが、行くと大体、八木さんがいて、海ノ向こうコーヒーがいて、というふうにプレイヤーが決まってしまっているじゃないですか。それはそれでいいのですが、もっと関わってくれる人が増えていくことがまず大事かなと思っていて、脱炭素の取り組みにしろ、コーヒー産業・コーヒー業界をより良くすることに力を使おうとするプレイヤーが増えていく動きができるといいなと思っています。
八木 世界的なムーブメントとしても、脱炭素という環境面だけでなく、生態系や生物多様性、ジェンダーなど、広く言うとリジェネラティブというキーワードで、著名な方々が発信していたり、バリスタの世界大会でもそういうキーワードでプレゼンテーションする人たちが出てきているので、これを機に、日本のコーヒーに興味があるまさにこれを聞いているような方々に、そこへの意識を持っていただけたらとても嬉しいですし、むしろどんどんこちらに参入してきていただけたら、めっちゃ嬉しいです。
田才 その入り口として、ウガンダの脱炭素コーヒーを手に取ってもらえるといいのかなと思います。
藤原 そうですね、そうです。「脱炭素は難しくないよ」というところをきっかけにして、手に取ってもらえたら。
八木 例えばオーガニックだと「なんかいいんですよね」というイメージがあると思うのですが、その感覚でいいのかなと思っていて。それが次のオーガニックみたいな感じで、脱炭素やリジェネラティブというのも、サステナブルというキーワードの延長線上にあるものなので、カジュアルに考えてもらえたらいいかなと思います。
藤原 ありがとうございます。まだまだお伺いしたいことがたくさんあるのですが、それはまた個人的に教えていただければと思います。バイオ炭の品質が何によって決まるのか、といったこともまた伺いたいのですが、ぜひ個別でお話をさせてください。
八木 ぜひ、ご要望があればいつでもお話しします。
藤原 ありがとうございます。グアテマラのプロジェクトが進まれたら、また教えていただきたいです。
八木 そうですね。決まったらご案内させていただきます。
藤原 ありがとうございます。では本日はこの辺りで、と思うのですが、みなさんよろしいでしょうか。何か言い残したことはありますか。
田才 まりおさん、うちのウガンダのコーヒーを紹介しなくていいんですか…! 最後にパスを出していたつもりでしたが。笑

商品紹介
藤原 ほんまや!すみません、パスを受け止めきれませんでした…笑 失礼しました。
冒頭でお話しした、6月に販売を開始した商品が4商品ほどありまして、ダーレ社と一緒にやっている商品になります。アラビカだけでなくロブスタもありますし、ファーメンテーションが色々面白いものも入っていますので、みなさんぜひお手に取って、ご購入をお願いします。 これは、八木が関わられたプロジェクトのものですよね?
八木 そうです。 僕も現地でカッピングをして、選んでいるロットです。
田才 味はどうですか?八木さん。
八木 本当にいろんな味があって面白いなと、すごいポテンシャルを感じる生産者でしたね。パイナップルを使ったファーメンテーションのものもありますし、アラビカもあり、ファーメンテーションが個性的なものもあります。ぜひみなさん、サンプルを取り揃えてみてください。
藤原 すみません、田才さん言っていただいて。めっちゃ大事なところを言い忘れていました!では、言い残したことはなさそうですね。これで大丈夫そうです。ありがとうございます!本日はこの辺りで失礼します。
八木 はい、どうもありがとうございました。
一同 ありがとうございました。失礼します~!




