海ノ向こうコーヒーで部長と産地担当をしている山本博文による連載をお送りします。
今回は、インドネシア〜西パプアのコーヒー産地を訪問した際の記録となります!
西パプアのコーヒー
Pyramidを後にして、向かった先はTiomと呼ばれる地域。
標高が2000mを超えており、とても寒い。植生は似ているものの急斜面が多く、開けた平坦な場所はない。コーヒーもその斜面に植えられている。コーヒーの生育はその農園が東西南北どちらの方向を向いているかによって大きく違ってくる。
なんにしても標高がすごい。インドネシア国内を探してもここまで高い標高の産地はあまりない。クリンチマウンテンは標高3000m超えだが、山周辺は自然保護区になっておりコーヒー栽培はできない。しかも品種はティピカ系(だと思う)。このTiomで唯一カフェをやっている店を訪れたが、そこで出てくるコーヒーの酸質がとても広がりがあり鮮やかで驚かされた。しかも、あっまい。
可能性がたくさんあるこの地域だが、課題はある。それは乾燥だ。山岳地帯のためどうしても日照時間が短く、適度に乾燥させることが難しい。温室をつくっているが、雨も多いためなかなか良い感じに乾燥が進まない。うーむどうしたものかと思いながらも、とりあえずちょっとだけ日本に持ってこようと決めた。せっかく来たのだし。
西パプアの人々
さて、ここまで書いて、もう一度西パプアの旅を頭の中で振り返ってみたが、どうにもかけている部分がある気がする。
コーヒーの品質にはまだまだ課題があるものの可能性があり、インドネシアの中でもかなり品質の高いコーヒーが作り出せるであろう。良い渡航でしたという、通常の産地渡航と変わらないレポートになっている。何か足りない。
あぁ、そうか、このPyramidやTiomに行くまで何よりも大変だったのだということに気がついた。
通常は、何月何日に行くからよろしくねーで済む産地が多く、その後は現地パートナーと共にいろいろな農園を回りに回る。そして頭をフル回転させながら、どういったコーヒーに仕上げると日本のロースターさんに気に入ってもらえるだろうと考える。
しかし西パプアはそうはいかない。行くまでがとても時間がかかる。
この日に行くねーと伝えてもまず返事がない。返事が返ってきても、いろいろな祭事があるとそちらを優先する。結婚式があるーとか、葬式があり村総出で祭りごとを行うー、といった具合だ。
今回もジャカルタからジャヤプラへの渡航し、その後Wamenaに入るまでに2日間かかっている。返信が来ないからだ。やっと返信が来たと思ったら、お葬式があり車がない。レンタカー借りたらいいじゃん、と伝えるもそれ高い。Wamenaのレンタカーは1日10万円。知り合いの車に乗ると、5万円(それでも高いが・・・)。なんにしても、産地に着いたとしても、誰も案内してくれないとのこと。しょうがないから、ジャヤプラでいろいろなコーヒー屋さんを巡り、生産者組合の事務所を訪れ、西パプアのいろいろな産地のコーヒーのカッピングをする。そして、ようやく返信が来て、来て良いとなる。Wamenaの空港に着いたら着いたで、迎えの車が来ない。急遽、政府のパーティが開かれたからそのパーティでコーヒーを提供することになったそうだ。
待つ、待つ、ひたすら待つ・・・・・。そして次の日ようやくPyiramidとTiomへと向かうことができた。産地へ到着するまで、ジャカルタ出発の日から考えて4日かかっている。
帰りも凄まじかった。電波が繋がらないから、飛行機の出発日を変更することができない。僕らは産地の山の中にいる。どうしよう。「俺、その空港会社の職員と知り合いだから、大丈夫!任せとけッ!」となんの根拠もない自信に満ちた言葉が投げかけられ、それを頼りに空港へ戻る。空港に着いた途端、案の定無理だよと職員に言われる。「あなたの飛行機は2日前に飛んでます」と・・・。しかしここからの職員へ対する説得が約30分。なんと乗って良いということになった。今までそれなりにエクストリームな場所を経験してきたが、乗れなかったチケットを乗れるように席をこじ開ける人々を見たことがない。チケットは手書きのチケット。ジャヤプラにつき、すぐにバリ島行きのチケットをとり、マッカサル経由でバリに到着。「乗れないよ」と言われたのが朝の6時。そこからなんだかんだあって、バリ島に到着。合計14時間。ふぅ。
彼らは経済的なリズムで生きているのではなく、彼らのルールで生活のリズムが作られて、その中で生きている。そのリズムはレゲエがよく似合う。同行した農家もボブマーリーをこよなく愛するヤーマンな男であった。ここのコーヒーを日本に持ってくるのは骨が折れるだろうなーとOne Loveを運転しながら熱唱する農家の彼の横顔を見ながら思った。そもそもこの産地のコーヒーを陸路では運べないから空輸かー、輸送費なー。でも、まぁとりあえず持ってきてみよう。彼らリズムに敬意を払いつつ、レゲエなコーヒーを楽しみに待とう。