夏にぴったり、ゲイシャフレーバーの楽しみ方 「急冷式ドリップ」

「ゲイシャの花は食べても美味しく、ジャスミンの味がする」
「ゲイシャのチェリーは甘いだけではなく、完熟パパイヤの味がする」

ゲイシャには、他の品種を圧倒する複雑で華やかな味わいがあります。

ジャスミンにラベンダー、ベルガモット、ライチ、マスカット、巨峰、マンゴー、パパイヤ、ストロベリー、ピーチ……
ゲイシャは、栽培される土地や精製方法によって、驚くほど多彩なフレーバーをもつのが魅力。コーヒー好きなら一度は体験しことがあるのではないでしょうか。

今回は、そんなゲイシャの魅力的なフレーバーを、よりシンプルに、より手軽に楽しむ方法をご紹介いたします!

「ゲイシャって、そもそもどんなコーヒー?」と気になった方は、前半の《ゲイシャの歴史》もあわせてご覧ください。

〜ゲイシャの歴史〜

エチオピアで発見され、中米へ渡ったゲイシャ

ゲイシャとは、アラビカ種を原種とする豆の一つです。ゲイシャは、エチオピアコーヒーの野生種の調査の一環で1930年代にエチオピア南西部のマジ郡で発見された品種とされています。その後、1950年代にコスタリカの熱帯農業研究所 (現CATIE)に渡りました。

ゲイシャが注目されるようになったきっかけ

1960年代になると、CATIEからパナマの農園に導入され、栽培が続けられていましたが、収穫量の少なさから商業的な成功には至らず、人々の関心が遠のいていきました。

それから30年後、1990年代にスペシャルティコーヒーという概念が生まれ、この新しい価値観が広まっていきました。
その動きの中、パナマのエスメラルダ農園を経営するピーターソン一家が新しく購入した農園で、特定の病気に耐性のある品種として再発見されたのが現在のゲイシャです。

1990年後半のパナマでは、自国で消費されていたコーヒーを国外に宣伝する目的で、品評会が開催されるようになりました。これが後のベスト・オブ・パナマに繋がります。

ピーターソン一家は、特別なフレーバーを持つゲイシャに注目し、2004年のベスト・オブ・パナマに出品しました。

この品評会で、他に出品されたものとは全く異なるフレーバーをもつユニークなこのコーヒーは、物議を醸しつつも、当時としては破格のオークション価格で落札されました。それまで個性に乏しいとされていたパナマ産コーヒーのイメージを覆したのです。ゲイシャはまさに、スペシャルティコーヒーという概念によって世に広まった品種といえます。

〜ゲイシャのフレーバーを楽しむために〜

● ゲイシャの魅力を引き出す「急冷式アイスコーヒー」

ゲイシャのフレーバーを楽しむおすすめの抽出方法は、暑い夏にピッタリの急冷式アイスコーヒーです。ホットコーヒーや、通常の冷やしたアイスコーヒーとは異なり、急冷式アイスコーヒーはフレーバーの個性が前面に出つつもキリッとした味わいに仕上がります。

今回ご紹介する方法は、ゲイシャのフレーバーをより明確に楽しむための抽出方法です。この抽出方法のポイントは3つあります。

ポイント①・・・素材自体のフレーバーが最も分かりやすい、浅煎りの豆を使用すること。
ポイント②・・・甘さが凝縮され、フレーバーを感じやすくするため、少量で抽出すること。
ポイント③・・・フレーバーを揮発させないために、氷で急冷すること。

例えば、通常のドリップでは合計180gを抽出するところを、この方法では80gの氷を入れたサーバーに100gだけを抽出します。氷を完全に溶かすことで、最終的な出来上がりの量を180gに調整します。

つまり、最初の濃い部分だけ抽出して、氷を溶かしきることで、最終的に通常の濃度に調整するということです。例えるなら、凝縮されたフレーバーのかたまりを、全体に均一に広げて、飲みやすい濃度に整えていくようなイメージです。

フレーバーを際立たせるおすすめの抽出レシピ

<抽出レシピ>
焙煎度 : ミディアム (1ハゼ後半)
粉量 : 15g
メッシュ : 中挽き
抽出温度 :  96度 
氷 : 100g
抽出量 : 140g (1投目20g → 20秒後 2投目50g→20秒後 3投目50g→20秒後 4投目20g)
総量 : 240g (濃度1:16)  氷を全て溶かして出来上がり!

焙煎のポイント 『ナッティーにならないように、ビターにならないように、フレーバーを花開かす』

◇ゲイシャのフレーバーをしっかりと発達させるため、中盤からハゼまでは高い火力をキープする。
◇ハゼ後は火力を落としていき、ロースト感やキャラメルのような風味を出さないようにする。
◇ビターさが出る前に、1ハゼ後半で終了する。

ゲイシャ3種を飲み比べて見えたフレーバーの特徴

パナマ タラマンカス農園 ゲイシャ ウォッシュ

ボケテやボルカンと並ぶ、ゲイシャの名産地、レナシミエントの伝統的なウォッシュです。

このコーヒーからは、クラシックな「THEゲイシャ」フレーバーとも言える、ジャスミン、ベルガモット、スイートレモンといったフレーバーが楽しめます。2004年のベスト・オブ・パナマ品評会の感動に想いを馳せながらお楽しみください!

パナマ ボケテ エル・パロマール農園 ゲイシャ ナチュラル

パナマの名門農園の一つママ・カタ農園を持つ、ガリードズ・コーヒー&エステーツ社のナチュラルです。

ゲイシャのナチュラルらしい、トロピカルフルーツフレーバーと、トロッとした厚みのあるマウスフィールが楽しめます。思わず、「甘っ!」と叫んでしまうほどの甘いフレーバーをお楽しみください。

グアテマラ エル・モリート農園 ゲイシャ ウォッシュ

カップオブエクセレンスで1位を含め何度もベスト3に入るロットを生産している名門農園のウォッシュです。パナマのウォッシュとは全く異なるフレーバーが楽しめます。

ゲイシャが持つ華やかさと、グアテマラらしい、良質の酸味とボディ感が加わり、マスカットやオレンジなどのジューシーさと、アプリコットのような甘さが続く複雑なフレーバーを楽しめます。

まとめ

1杯300円でゲイシャが飲める

ゲイシャはとても魅力的ですが、その分、非常に高価です。

カフェで注文する特別な一杯として、数千円の価値は十分あるのですが、普段なかなか飲む機会が少ないのが現実です。

今回使用した生豆の販売価格は、200gで3,000円以内です。

つまり、焙煎をすることができれば、生豆20gを使用する計算では一杯300円程度で、この魅力的で贅沢なコーヒーのフレーバーを気軽に楽しむことができます。
フレーバー豊かな特別に美味しい一杯を、休日にゆっくりと味わったり、友人やご家族に振る舞ったりすれば、夏の暑さも吹き飛ぶ贅沢なひと時となるはずです!