私たちの活動の原点は、ラオスの森にあります。森林減少が深刻なラオスで、森を守りながら、そこに暮らす人たちの生業にもなるコーヒーづくりができないか、という想いから生まれた活動。農家さんたちと品質向上に取り組み、できあがったコーヒーを日本へ届けることから、私たちの歩みが始まりました。
それから10年。アジアを中心に中南米やアフリカにもつながりを広げ、産地の自然や暮らし、文化、つくり手のストーリーとともにコーヒーを届けてきました。
気づけばたくさんの生産者さんやお客さま、そして一緒に働く仲間たちと関わるようになりました。
「どんなコーヒーを届けたいのか」「品質が良いってどういうこと?」「生産者にとって良い取引とは?」「環境への配慮って?」「スペシャルティコーヒーの定義って何?」…… そんな問いについて、話し合いになることがあります。だからこそ、私たちが大切にしていることを、少しずつでも言語化して、基準として明確にしていきたいと思っています。
同じコーヒーでも、見る角度によってその価値や意味は大きく変わります。
生産技術は進化し続けていて、産地の状況や社会のあり方も変化していきます。
新しい考え方や、これまで見えていなかった課題が生まれることもあります。
だからこそ、数字として測れる評価だけではなく、コーヒーが生まれる背景に目を向けながら、原理原則を大切にしつつ、常に見直し、考え続けることが大切だと思っています。
この基準は暫定のもの。あくまで、いまの海ノ向こうコーヒーが、コーヒーを取り扱う上で大切にしたいことをまとめた基準です。
私たちは、1〜4の基準項目をすべて満たすコーヒーを、取り扱います。
その取り扱うすべてのコーヒーについて、どこで、誰が、どのようにつくり、どのような人が関わり届いたのか、そのサプライチェーンを、私たち自身が説明できることを大前提とします。
1. 取り扱うコーヒーのサプライヤーの選定基準項目
以下の項目のうち、1つ以上に該当し、かつ、その具体的な行動や取り組みについて説明できるサプライヤーさんを優先する。
※サプライヤーさんの定義:生産農家、生産者組合、生産者企業、輸出業者、商社
各項目をタップすると、海ノ向こうコーヒーの考え方と産地での具体例をご覧いただけます。
01環境負荷の低減を目指している
海ノ向こうコーヒーが考える「環境負荷の低減」とは、単に農薬を使っていない、あるいは有機栽培である、といった一つの基準だけで決まるものではありません。
コーヒーが育つ土地の環境、生産者の暮らし、地域の生態系、そしてコーヒーが私たちのもとに届く過程まで含めて、できるだけ長い時間軸で考えていきたいと思っています。

産地での取り組み
ラオス現地パートナー、サフロンコーヒーさんでは、森林を伐採してコーヒーの農地を広げるのではなく、既存の森や山をコーヒーの栽培地として活用するアグロフォレストリーを推進しています。
東ティモール農家さんは、コーヒー農園のところどころに「ビオポリ」という穴をほり、剪定した枝葉や、加工で取り除いたコーヒーパルプを入れてたい肥化させ、コーヒーの木々や農地への肥料として、資源を循環させています。
ウガンダダーレー社では、パーチメントの脱殻時に出る殻を炭化させ、バイオ炭として土壌に返す取り組みを行っています。
ルワンダコーヒー農園や加工場から川や海へ流れる水への配慮も大切です。ウォッシングステーションでは、精製加工に使用した水を浄化させるために排水ピットを導入しています。
こんなことも、環境負荷の低減につながる行動です
コーヒーの木だけでなく、木陰をつくる樹木や在来植物など、多様な植物が共存する農園をつくること、鳥や昆虫など、さまざまな生き物が暮らせる環境を守ること。
カバークロップや緑肥を活用することで、土壌流出を防ぎ、その土地とその土地の持つ肥沃さを次の世代へつないでいくこと。
02コーヒーの品質向上を目指している
私たちは、おいしい、と思ってもらえるコーヒーをお届けしたいと思っています。ただし、コーヒーの味わいだけでなく、サプライヤーが日々どのようにコーヒーと向き合っているのか、その姿勢や工夫も大切にしていきたいと考えています。
コーヒーチェリーを適切な熟度で収穫すること、収穫後の工程が味わいに大きく影響することを理解し、収穫後の選別・保管・乾燥などを適切に行っていることは、基本として求めたいです。

産地での取り組み
タイその土地に適した品種を選ぶ、在来系統の品種を大切にする、病害や気候変動への耐性なども含めて植える品種を考える。生産者のヌイさんは、新しい品種の栽培に取り組む一方、おじいさんの代から所有するティピカの区画を今でも大切に守っています。
インド木の状態や生育に合わせて施肥や剪定を行うことも、栽培の面から品質向上につなげる取り組みの一つです。目指す味わいのために、土壌分析などのデータを活用して、どのような肥料を加えるのかを考える生産者さんにも出会いました。
インドネシア輸出業者のジョハンさんは、私たちが買い付けを行うロットをすべてカッピングして、自分のコメントを共有してくれます。私たちがカッピングしたコーヒーの評価を取引農家さんへフィードバック、品質のすり合わせや、品質の改善に協力してくれる大切なパートナーです。
イエメン ⇄ インドネシア
海ノ向こうコーヒーの取り扱うコーヒーの生産者同士の交流も。イエメンの生産者が、インドネシアの精製方法を参考にして、コーヒーを精製してみるといった試みもありました。
03地域、社会、農業への貢献を大切にしている
私たちは、コーヒーを生産することと、そのコーヒーが生産される地域や社会をより良くしていくことは、切り離せないと考えています。
コーヒーの品質だけでなく、その背景にある地域や社会にも目を向け、生産者のみなさんと一緒に、コーヒーをつくり続けられる環境を育てていきたいと考えています。地域の雇用や仕事を生み出し、そこで暮らす人たちの生活を支えていることや、季節労働者を含め、農園で働く人たちに適切な労働環境をつくろうとしていることも大切にしたいポイントです。
産地での取り組み
インドパパクチ農園のパバンさんのところでは、収穫期に働きに来てくれる季節労働者さんのために、住居と必要な電力や水などを共有しています。
グアテマラオーロラ農園のアルドさんは、オーロラプロジェクトと題して、売り上げの一部を、コバン地域の住民に、生活において必要な電力を補うためのソーラーパネルや、安全な調理用のストーブの提供に活用する取り組みを行っています。
ペルーチリノス農協では、若い世代がコーヒーに関わるきっかけや興味を持てるように、若者グループを結成し、コーヒー生産の活性化に取り組もうとしています。
04コミュニケーションを大切にしている
私たちは、一緒に考え、一緒につくっていく関係を大切にしたいと思っています。

「今年のコーヒーは、なぜこんな味になったのか」「来年、もっと良くするには何ができるだろう」と、生産者と一緒に考える。そして、生産者から聞いたお話を、消費者にお伝えする。消費者から届いた感想や反応を、また生産者に届ける。コーヒーを介して人と人の間に発生する情報の行き来を大切にしたいと考えます。
私たちが大切にしたい関係
- 栽培や収穫、精製について、気になることや課題を率直に話し合えること
- コーヒーの味わいや品質について、良かった点だけでなく、改善できる点も共有すること
- 価格や取引条件についてもオープンに話し合えること
- 困ったことや想定外のことが起きたときにも、短期的な損得だけで判断せず、対話を通じて解決を目指せること
- 一度の取引で終わるのではなく、長く関係を築きながら、毎年少しずつより良いコーヒーを目指していけること
それらを実現できる、コミュニケーションを大切にしてくれるサプライヤーさんを求めます。
05海ノ向こうコーヒーの活動に共感性がある
単に「コーヒーを買ってくれる会社」としてではなく、私たちが大切にしている考え方や活動に共感し、長く信頼関係を築きながら、共に歩んでいけるパートナーとして、サプライヤーのみなさんと仕事をしていきたいと考えています。

06輸出・輸入業務、品質管理、問題発生時の対応においてプロフェッショナルさがある
コーヒーは、生産農家がつくったものが、そのまま飲み手に届くわけではありません。
収穫、精製、乾燥、保管、輸出、輸送、輸入、そして日本での保管や焙煎まで、たくさんの人の仕事を経て、ようやく一杯のコーヒーになります。

私たちは、その一つひとつの工程を丁寧につなぎ、生産者がつくったコーヒーの品質と価値を、できるだけ損なわずに届けることを大切にしています。私たちが考える「プロフェッショナルさ」は、何も問題を起こさないことだけではありません。コーヒーの生産や輸出には、天候、収穫量、輸送、為替、通関など、自分たちだけではコントロールできないこともたくさんあります。だからこそ、何か問題が起きたときに、正確に状況を把握し、必要な人に伝え、一緒に解決し、その経験を次に活かすことを大切にしています。
たとえば、こんな姿勢
- 輸出に必要な書類や手続きを適切に管理し、約束したスケジュールを守ろうとすること
- コーヒーのロットや数量、品質、出荷時期などを正確に管理できること
- 輸送や保管による品質劣化のリスクを理解し、適切な方法を選択していること
- 生豆の水分値や欠点豆、異物混入など、品質に関わる事項を適切に確認していること
- ロットごとの情報を記録し、必要なときに生産から出荷までを追跡できること
- 品質に問題があった場合、その原因を確認し、関係者と情報を共有、解決に向けた行動ができること
- 予期せぬ問題が起きたときにも、関係者と迅速かつ誠実にコミュニケーションを取れること
- 一度起きた問題をそのままにせず、原因を振り返り、次の収穫や出荷に改善をつなげようとすること
そんな姿勢を大切にしてくださるサプライヤーさんを優先します。
2. 取り扱うコーヒーの感性・外在的視点項目
以下の項目のうち、いずれか一つ以上に当てはまり、かつ具体的に説明ができること。
「感性・外在的視点項目」とは、コーヒー豆やコーヒーの味わいからだけでは、見えない部分のことを指します。海ノ向こうコーヒーでは、その背景にある「見えない部分」にも目を向けたいと考えています。
各項目をタップすると、海ノ向こうコーヒーの考え方と産地での具体例をご覧いただけます。
01公平な還元生産者の生活の安定や向上に寄与するもの
農家さんが暮らす地域の気候や土壌がコーヒー栽培に適しているかを一緒に確認し、その土地に合った栽培方法を考えています。また、収穫や精製などの品質向上にも協力し、できるだけ良いコーヒーを安定して生産できるよう取り組んでいます。

こうした活動を通じて、農家さんの新たな収入源を生み出し、収入の増加や暮らしの安定につなげることを目指しています。
産地での取り組み

現地パートナーのジーニアスコーヒーの協力のもと、マイクロミルプロジェクトを立ち上げ、農家さんとともに加工場の建設から生産に取り組み、海ノ向こうコーヒーでは継続して買い付けを行っています。
02環境への配慮環境負荷を低減し、地球環境の持続性を高めるもの
豊かな生態系を守り環境負荷を減らし、持続可能な収入源を提供する取り組みを行っています。

産地での取り組み

クリンチ山周辺で活動するALKO生産者組合では、コーヒー生産に加え、ごみ拾いや植樹活動など、地域環境の保全にも取り組んでいます。海ノ向こうコーヒーでは、地域の自然環境を守る取り組みを生産者のみなさんと一緒に進めています。
03文化の尊重産地の文化を尊重し、地域コミュニティの向上に寄与するもの
市場で評価されやすいコーヒーだけを追い求めるのではなく、その土地ならではの風土や文化、生産者一人ひとりの想いや暮らしが感じられるコーヒーをお届けしたいと考えています。
産地での取り組み



アサロを訪れた際に出会った「マッドマン」の文化。かつて民族間の争いが絶えなかった時代、アサロの人々は泥で体を覆い、粘土や石など身近な素材で仮面を作ることで敵を退け、村を守る知恵としてその文化を受け継いできました。
海ノ向こうコーヒーでは、アサロのコーヒーを「マッドマンコーヒー」として商品化し、販売しています。一杯のコーヒーを通じて、その土地で育まれてきた歴史や文化、生産者の想いに触れるきっかけをつくることも、私たちが大切にしている役割のひとつです。
04選択肢の拡張生産農家にとっての販路、商社にとっての販売方法、ロースターにとっての取り扱い商品など、多様な選択肢を、関わるすべての人とともに広げる。
海ノ向こうコーヒーがそのコーヒーを取り扱うことで、生産者さん、商社さん、ロースターさんにとってさまざまな選択肢を増やしたいと考えています。
海ノ向こうコーヒーの取り組み
Co-NECT(コネクト)プロジェクト小規模であるがゆえに、市場に出回りにくいコーヒーに光を当てています。輸入前のサンプルをロースターさんに紹介することで、希少なコーヒーと出会う機会をつくっています。販路の開拓に悩んでいた生産者さんのコーヒーが、日本のロースターさんのお店でしか出会えない特別な一杯となり、お店の目玉商品になることもあります。
うみむこマーケットロースターさんがコモディティコーヒーを1袋から購入できるサービスを提供しています。日本のコーヒー生豆商社からコモディティコーヒーを仕入れる場合、まとまった数量での取引が一般的で、1袋単位での購入は難しいのが現状です。ロースターさんにとっては必要な量から仕入れができる場であり、商社さんにとっては、これまで取引が難しかった、より多くのロースターさんに商品を届けられるプラットフォームとなっています。
うみむこパートナーズ世界各地で生産者と丁寧な関係を築きながら、その土地ならではの魅力ある商品を日本へ届けているサプライヤーさんのコーヒーを、ロースターさんへご紹介しています。サプライヤーさんにとっては新たな販路の拡大につながり、ロースターさんにとっては、これまで扱ったことのないサプライヤーさんのコーヒーとの出会いの場になっています。
3. カッピング評価(コーヒーの味わいの評価)項目
以下のとおり、各グレードごとに定めた基準を満たすこと。
① スペシャルティグレード
海ノ向こうコーヒーとしての定義
原則として、従来のSCA方式のカッピングスコアで80点以上であること。
例外措置
以下のいずれかに該当する場合は、80点に満たない場合でも取り扱い可能とする。
- 需要に対して妥当な価格帯であるもの
- 希少かつ価値のあるもの
- 海ノ向こうコーヒーが起点となって生産を依頼したもの
② コモディティグレード
海ノ向こうコーヒーとしての定義
スペシャルティグレードの基準には満たないものの、大きな欠点が味わいに現れていないこと。
※重度の薬品臭、重度のカビ、重度の発酵、コーヒーではない味わいがある場合は取り扱わない。
4. グリーングレーディング(コーヒーの外観の評価)項目
以下の項目をすべて満たすこと。
| 欠点の有無 | 著しい欠点がないこと。 |
| 規格適合 | 取り扱うコーヒーが、定められた規格基準に適合していること。コモディティグレードについては、規格基準値から著しく逸脱しないこと。 |
| 外観の色調 | プロセスに由来する色調として考えられるものから極端に逸脱していないこと。 |
| 生豆の匂い | 素材やプロセスに由来する匂い以外の異臭がないこと。 |
| 水分値 | 10%〜12.5%程度の範囲内を目安とする。 |
| 水分活性値 | 0.40台後半〜0.50台前半が望ましい。最大でも0.6台前半までとする。 |
更新・改定のルール
- 原則として、一年に一度見直しを行う。
- コーヒー業界の動向や環境の変化を踏まえ、必要に応じて更新・改定を行う。
- チーム内の意見やフィードバックをもとに、柔軟に改善を行う。
2026.08 制定

