レイジーマンコーヒーとの出会い
フィリピンの生産者さんの紹介で訪れたタイ。チェンマイ市街から西に進むと、カレン族のコミュニティが暮らす村があります。
昔から自給自足を中心とした暮らしを営み、自然とともに生きてきた人々。しかし周囲の著しい経済発展の中で、彼らの生活も変わっていきます。
徐々に近代化していく村の生活の中で、伝統的なカレン族のあり方を見つめなおし、コーヒーを通じて世界に発信していこうとする農家さんたちがいます。
それが私たちの訪ねた、「レイジーマンコーヒー」の人々でした。
「僕らは伝統を忘れないために、あえて「なまけ者」であろう」
「僕は怠け者なんだ。すぐそこに田んぼがあって、庭にフルーツがなっていてコーヒーが育ってる。それで十分生きていけちゃうからね。」
レイジーマンコーヒー代表のスウェは、カフェでギターを弾きながら、口ぐせのようにいいます。
いつも優しい笑顔でみんなを安心させてくれるスウェですが、彼の家族は代々この地域のカレン族のリーダー的存在であり、活動家。 昔、政府が森林保護区にするからと先祖代々の土地の立ち退きを強制したときも。 そこに暮らす人々の、自然と共に生きて行こうとする努力への尊敬を欠いた、ただ地図の上に線を引いて決めたような政策に憤り、コミュニティのみんなを連れて大行進を行ったそうです。
最近では課題は多様化し、例えば遺伝子組み換えの種子や、農薬化学肥料ありきのプランテーションで現金収入を得ようとして、借金まみれになっていってしまう農家さんも増えています。 大きな経済の流れは、大行進ではとめられない。伝統に立ち戻ろうと叫んでも、家族の暮らしを守らなければならない村の人たちの協力を得ることは難しくなっていました。
あせらずゆっくり否定せず
大きな暮らしの変化の最中に育ったスウェは、これまでのように変化を否定し続けるのではなく、外の世界との関わりの中で、新しい持続可能な生活を模索しようと考えています。
そのひとつが、40年ほど前からこの地域の森の中で育っている植わっている、コーヒーでした。アグロフォレストリー(森林農法)により、安定した現金収入を得つつ、昔ながらの自給的な暮らしも守る。それを地域を巻き込んだビジネスにしていこうとしています。 明日明後日の生活が急に変わるわけではない、とても時間のかかる活動ですが、それでも地域の未来を見据えてじっくり、取り組んでいます。
コーヒーは、レイジーマンと世界をつなぐ窓
スウェはこう言います。
「伝統的な生活をいつまでも続けられるとは思っていない。でも外の世界に染まっていくのではなく、良い中間地点を目指したい。
私たちはコーヒーを通じて外の世界を見て、外の世界の人たちはコーヒーを通じて私たちのことを知ってほしい。だから私たちにとって、コーヒーは”窓”なんだ。」
「レイジーマン」という一風変わった言葉に託した彼らの思いに深く共感し、私たちもそのまま「タイのなまけ者コーヒー」と名付けました。
タイのなまけ者コーヒー
タイの北部、チェンマイのカレン族が暮らす村から。自給自足を中心とした昔ながらの生活や文化を守り、「僕たちはなまけ者だから」と笑う彼らがつくるコーヒーは、シナモンのようなホッと落ち着く甘みと香りが特徴です。農家さんは、換金作物を大規模につくるよりも、昔からの暮らしを続けたいと、森の中でコーヒーを育てています。「伝統的な生活をずっと続けられるとは思わない。でも外の世界には染まらず、良い中間地点を探したい。コーヒーは、僕たちの村と外の世界をつなぐ窓なんだ」と話します。