【雲南省 かもめの天空農園 渡航日記①】
5年ぶりの訪問、そして曾さんの今

雲南を訪れたのは2024年3月のはじめのこと。
5年ぶりに海ノ向こうコーヒーの雲南のパートナー、曾さんを訪ねました。

日本から上海を経由して、雲南省の南部に位置するシーサンパンナ州の空港に降り立ちました。まだ寒さの残る上海とは全くちがう湿度と気温、熱帯植物が生え、まるで東南アジアに来たかのような雰囲気です。

空港を出ると曾さんが出迎えてくださいました。

曾さん:「こんにちは、ようこそ。今日だけはもう仕事のことはおいておいて、美味しい料理を食べて、楽しみましょう。」

そう言って、曾さんのご友人の営むレストランへ連れて行ってくださいました。
タイ族の多く住むシーサンパンナの街。タイ料理にアレンジを加えた料理が机の上を華やかに彩っていました。

(話に夢中な曾さん)

席に着くやいなや、コーヒーのお話が止まらない曾さん。かつて生産の品質管理を行う技術者として働いていたZebra Coffeeから独立して、かもめの天空農園を立ち上げることにしたこと、コーヒーのプロセスのこと、乾燥のこと、新しく取り組んでいる産地のこと、発酵のこと……

曾さん「Zebraを離れてしまったのは、Zebraが焙煎業も始めるようになったから……」

栽培や精製加工のことにもっと深く取り組んでいきたい曾さん。会社の方向性と自分の思いとのずれが大きくなっていったのかもしれません。その後、かもめの天空農園を立ち上げ、品質管理に力を入れながら農園の管理から加工場の運営、中国国内での生豆の卸販売、輸出にと、精力的に活動されています。

それだけではなく、雲南コーヒー研究所のアドバイザーとして品種の研究を行い、プーアル学園の教授として新しい世代の育成にも力を注いでいます。

曾さん:「中国の豆、素材だと中米とかアフリカには及ばないから、加工でカバーできるようにしているんだ。」

曾さんが精製のプロセスで大事にしているのは、水と空気、温度、それから時間。ウォッシュドでも甘さを引き出せるように、発酵のやり方ひとつとっても実験を繰り返す日々。雲南のあちこちに生産の拠点があり、地域の気候も考えて、発酵の時間や方法を考えているそう。

曾さん:「乾燥はね、今はほとんど乾燥機を使っているんだ。乾燥テーブルでつくったほうが美味しいけれど時間もコストも削減できるし、質も均等になるんだ。」

質だけではなく量をつくることも求められる。乾燥機だからといって、機械任せにするのではなく、乾燥時間や温度、乾燥機の設計まで常に改良を重ねています。妥協しない、質と量を両立させたコーヒーづくりにも取り組んでいます。

曾さん:「インヒューズドの話をしよう。」

雲南でもいち早くインヒューズドのコーヒーに取り組んでいる曾さん。取り組んでいるのは、天然の果物や花をそのまま入れたもの、そして果物や花から抽出したエキスをつかったもの。お茶に、クチナシ、バラ、ジャスミン、最近ではイチゴの酵母菌を使ったものにも試験的に取り組んでいることを話してくださいました。エキスのつくり方には、漢方のもとになった中医学が応用されているんだそう。中国雲南ならではのインヒューズドコーヒーのかたちがありました。

(シーサンパンナの朝。高層ビルやホテルが立ち並ぶ)

曾さん:「いままで取り組んできた地域が雲南の中のモンリエンという場所。農薬や化学肥料の不適切な使い方で土壌が悪くなって来ているんだ……。モンリエンはこれから土壌改良に力を入れていく予定なんだよ。新しくイウという場所にコーヒー生産の拠点をつくっていこうとしているところなんだ。そこも今回見てもらいたいと思っているんだ。」

はじめて聞く地名、どんなところなんだろうと、まだ見ぬ地域に思いを馳せながら、曾さんのお話に耳を傾けていました。

曾さん:「仕事の話はしないって言ったけど、結局仕事やコーヒーの話になってしまったね。ごめんなさい。ささ、美味しい料理、いただきましょう。」

話に夢中で料理はそっちのけ。夜もすっかり更けていました。

【雲南省 かもめの天空農園 渡航日記②】 曾さんと雲南、そしてコーヒーとの出会い