こんにちは、海ノ向こうコーヒー出荷担当の鎌塚です。
2022年7月に訪問をした東ティモール・レヌマタ村のコーヒー豆がついに日本に届き、マイクロロットとして販売を開始しました。
レヌマタ村はいったいどんな土地で、どんな人々がコーヒーをつくっているのか。
今回は商品ページではお伝えしきれない、ちょっと深堀りした情報をお伝えします。
レテフォホ郡 レヌマタ村
レヌマタ村は東ティモールのレテフォホ郡というエリアの山奥にある小さな村で、約18~20世帯のコーヒー生産者さんがいます。
(東ティモールは子どもが多く、1世帯約7~8名)
今回お届けするレヌマタ村のコーヒーは、その中の「10世帯」の生産者さんたちによりつくられたマイクロロットです。
2022年7月に海ノ向こうコーヒーの東ティモールのパートナー・NPO法人ピースウィンズ・ジャパンさんにご案内いただき、レヌマタ村を訪れました。
現地までほとんど舗装されていないデコボコでせまい山道を車で走ります。
行くだけでも一苦労。村の位置が分かっていたとしても、自分たちでは容易にたどり着けません。
東ティモールの人はよくコーヒーを飲みます。
それもネルドリップ。深煎りに焼いた豆をたっぷり淹れるのが東ティモールスタイルです。
レヌマタ村に着いてすぐ、コーヒーと揚げパン、焼き芋などとともに、あたたかく迎え入れていただきました。
レヌマタ村の人々はほとんどがコーヒー農家で、収穫から精製(パーチメントコーヒー仕上げ)までこの村で行っています。
コーヒーの木が植えられている圃場(ほじょう)は、村から歩いて約5分ほどの標高1,400~1,800mの山の斜面にあります。
訪問した7月下旬は通常収穫が終わってしまう頃ですが、2022年は雨季が長く続き、コーヒーの花の開花が遅れたこともあり、まだレヌマタ村では収穫を行っていました。
というわけで、早速一緒に収穫へ向かいます。
いざ、コーヒー収穫と精製へ
完熟したチェリーを中心に、すべて手摘みで収穫。樹上にあるチェリーは、竹をはしごがわりにのぼって収穫します。
言うは易しで、実際にやろうとするとなかなかバランスがとれません。
途中でレヌマタ村にたくさん設置されている「ビオポリ」を見せていただきました。
ビオポリは木と木の間につくる小さなコンポストのようなもので、有機的な土壌改善の取り組みとして知られている手法です。
化学肥料を使わずにコーヒーの木に必要な栄養を与えられるよう、いくつものビオポリがつくられていました。
土壌が豊かな証拠のひとつ、ミミズもばっちりいました。
日本人はすぐミミズ探す、というのは村の方々には有名のようです。
僕も探していると「やはりお前もか」という顔をされました。
収穫したチェリーを村に持ち帰り、みんなでピッキング。完熟したチェリーだけを選別します。
手で選別したチェリーを水の入った樽の中に入れ、さらに選別。
水に浮いてきたチェリーを取り除くこの工程を「フローター選別」といいます。
見た目は完熟でも中がスカスカなことがあります。
次に、選別したチェリーの果肉を取り除きます。
「パルパー」という果肉除去機を使いますが、なんと驚きの木製。
通常、電動のパルパーがほとんどですが、レテフォホの村々では木製の手動パルパーが使われています。
手づくりとは思えない、なめらかな仕上がり。
この木製パルパーはたったひとりの職人さんがつくられているそうです。
チェリーに水をかけながらハンドルをまわすと、手前に果肉がとれた豆が出てきます。
除去された果肉はパルパーの後ろ側に出て、そのまま畑へ直行。肥料として再利用されます。
果肉を取った豆にはミューシレージという膜がついています。ぬるぬるした触感です。
果肉を除去した豆を発酵槽に入れ、フタをした密閉状態で48~72時間置いておきます。
そうすることで分解が進み、豆のまわりについているミューシレージが取れていきます。
ミューシレージが取れたら、天日干しで10日から2週間ほどかけて乾燥させます。
この日に収穫したコーヒー豆は発酵待ちなので、乾燥中の別のコーヒー豆を撮らせていただきました。
夜は露に濡れてしまうので屋内に閉まって、また翌朝出して干す。これを繰り返す。
最も地味ですが、よい品質に仕上げるための最も重要な工程です。
こうして乾燥まで終えたコーヒーを「パーチメントコーヒー」といいます。
この後、パーチメントという殻をとる「脱穀」という作業を行うと、「コーヒー生豆」となるのです。
村ではこの「パーチメントコーヒー」に仕上げるところまでを行っています。
その後、首都ディリにある大きな工場へと持ち込まれて脱穀され、港へと運ばれて輸出されます。
ちなみに村でコーヒーを飲むときは、このような小さな木製の脱穀機を使います。
終わりに
これが、私たちが2022年7月に東ティモールで見て、一緒に体験したコーヒー生産の一連の流れです。
実際に産地で一緒に収穫からピッキング、精製までを行ったあのコーヒーがいま、遠い海を越えてここにある。
そう思うと、とても感慨深いです。
東ティモールで木から手摘みした実が生豆となり、いまこうして日本で自分の手の中にある。
「輸入品」とはそういうもので当たり前のことなのですが、数々の人の手を経て遠い土地へ届けられ、使用されることに対して、あらためてじっくり考えたいという気持ちがわいてきました。
たとえばスーパーできれいに並んでいるフルーツをみるとき。
これは手摘みなんだろうか、それとも機械なんだろうか。
誰がこんなにきれいにヘタを取っているんだろう。
機械なら、それをどうやってつくってるんだろう。
専用の器具をつくるのって大変だろうな、と考えたり。
フルーツを手に取って、ずっしりとした重みを感じたら…。
1日でどれだけの量がとれるんだろう。
だれがどうやってとって。だれがどうやって運んで。
どれだけの人の、どれだけの工程を経て、私たちの目の前に並んでいるんだろう。
そんなことを考えます。
考えだしたらキリがないほどの「だれがどうやって」が、「輸入品」という一言につまっています。
レヌマタ村の人々が丹精込めて育て、つくり上げたマイクロロットのコーヒー。
ぜひたくさんの日本の方々に味わっていただき、東ティモールという国のこと、そしてそこで暮らす人々のことを想像していただきたいと思います。
ぜひ楽しく、ご賞味ください。