この6月末~7月初旬、海ノ向こうコーヒーではインドネシアのバリ島にて産地ツアーを行いました。
バリ島といえば、青々とした海をのぞむ南国のリゾート地。
と同時に、生産者とロースターの距離が近く、互いにフィードバックをすることで品質の高いスペシャルティコーヒーが生まれている産地でもあります。
世界中の加工方法も試されていて、今とても成長しているのを実感しました。
●シンガラジャとCurtina Coffee農園
バリ島北部の地域、シンガラジャ。青い空が広がっていて、太陽の光がとても力強い地域。
暑いけども、日本のように湿気でむわっとした感じはなく、とてもからっとしています。
ここは、若手生産者WanaさんのCurtina Coffee農園の乾燥場。
農園から運ばれてきた豆がパティオ一面に広げられて、さんさんと降り注ぐ太陽と地面の熱で乾燥されています。
実はコーヒーチェリーを栽培している農園は、ここから車で1時間30分ほど登ったところにあり、結構距離があります。しかもこの乾燥場はわざわざ場所を借りているとのこと。
なぜそこまでしてシンガラジャで乾燥をしているかというと、ここは安定して晴れの日が多いからだと教えてくれました。
インドネシアは乾季と雨季があり、訪問したときは乾季の時期。
乾季だから雨はふらないのかと思いきや、霧雨のようなサーっとした雨が数時間ふることがあるそう。滞在中も、何度か雨にあいました。
そんな中、すがすがしいくらいカラっと晴れるシンガラジャ。
安定して乾燥でき、品質が高く、量としてもマーケットに出すにはもってこいの場所です。
●Wanaさん
WanaさんはCurtina Coffee農園の2代目。そしてまだ22歳!
バリスタだったWanaさんは、お父さんの農園でも加工を工夫することでもっとおいしいコーヒーが作ることができるとわかり、生産者となってスペシャルティ部門を立ち上げました。
「もっと規模を大きくして、バリのコーヒーブランドを広げていきたい」とWanaさん。
そのためにはコーヒーチェリーの量が必要です。
自分の農園で収穫できるコーヒーチェリーは年間7トンほどで限りがあるため、周辺の約200の農家さんから140トンほど集めています。
これは、周辺の農家さんとの信頼関係を築いて、求める品質のコーヒーチェリーを育ててもらえるよう教え合っているからこそできること。
そして、乾燥場とともに、精製を行う加工場も作っていることも大きなポイントです。品質を上げるために、様々な精製方法と乾燥を試すには必要な設備です。
●バリ島のコーヒー作りのサイクル
では、品質を高める技術力の向上はどうしているのか?
Curtina Coffee農園だけでなく、訪れたどの農園の生産者さんからも、バリ島では生産者・ロースター・バリスタでよく集まるよ、と聞きました。
集まってカッピングをして、フィードバックを送り合ってるよ、と。
カッピングはロースター・バリスタのカフェでも、生産者の農園でも行われています。
生産者はカフェに行って、自分が作ったコーヒーがどのように提供されてどんな反応があるのかわかり、ロースターやバリスタは、農園でどのようにコーヒーが育てられて、生産者がどのような想いを持っているのかわかる。
お互いの状況がわかるから、よりよくしていくためにどうするといいか対等に話し合える。
世界で試されている加工方法の情報も交換して、生産者はすぐに自分でもやってみて、次のカッピングで意見をもらう。
そしてその意見をもとに改善する・・・。
この繰り返しで、バリ島全体のスペシャルティコーヒーの品質が上がるとともに、それを飲む消費者のコーヒー文化も広がっています。
短期間の滞在でも、バリ島内の生産者とロースターが同じ方向を向いて、おいしいコーヒーを作るサイクルができているのがよくわかりました。
●自由の象徴
最後に、
シンガラジャで聞いて印象的だったのは、コーヒーは自由の象徴ということ。
バリ島は観光業が中心。中心部で収入を得るためには観光業で働きに出るか、土地を売るか。
でも、ここだとコーヒーで収入を得る選択肢を選べる。
だからコーヒーは自由になれる象徴だ、と。
華やかなリゾート地で自由に過ごす。それは観光客にとってのバリ島。
自由になる選択肢であり、生産者からロースター、その先の消費者へとつながり、その全員にとっていい影響を生み出しているのがバリ島のスペシャルティコーヒー。
シンガラジャの太陽の下、そう思いました。