
「ブレンドの味がいまいち決まらない……」「牛乳との相性のいいコーヒーってなんだろう?」
メニューや商品づくりで、そんなもやもやを感じたことがありませんか?
それを解決してくれるかもしれないアイテムのひとつがロブスタです。
ロブスタと聞くと、「苦い、美味しくない、缶コーヒー用の低品質のコーヒー……」以前の私は、ついついロブスタに対してそんなイメージを浮かべていました。
海ノ向こうコーヒーに入ってすぐの頃に出会ったコーヒーのひとつに、このイメージを覆してくれたものがあります。インド パパクチ農園のロブスタです。ロブスタなのに、甘くて、何かフレーバーも感じる……聞けば、ファインロブスタの認定も受けているコーヒーでした。
「ファインロブスタとは?」と気になった方は、こちらをご覧ください。
インド パパクチ農園 ロブスタの美味しさの秘訣を、生産者さんに聞いてみました!
どうすれば、そんなに美味しいロブスタがつくれるのか気になり、海ノ向こうコーヒーで取り扱っているロブスタを生産する、インドのパパクチ農園のパバンさんにそのカギを聞いてみました。
パパクチ農園の栽培面の特徴はなんですか?
パバンさん:パパクチ農園では、2段階のシェードシステムを取り入れています。特に背の高い木をファーストシェードツリーとして。ファーストシェードツリーとコーヒーの木との中間ぐらいの高さの木をセカンドシェードツリーとして使っています。こうして二重に日陰をつくることで、季節ごとの環境の変化から、コーヒーの木を守ることができるんです。
あれはダダップツリー。これはコーラルツリーというマメ科の木です。窒素固定をしてくれるので、園内の土壌中の栄養バランスを整える働きもしてくれます。
あれはコショウのつるです。シェードツリーにはわせて栽培しています。コーヒーも採れるし、副産物としてコショウも採れるので、収入源の幅が広がります。

収穫で気を付けていることはありますか?
パバンさん:同じ木でもチェリーによって熟し方が変わってくるので、収穫のタイミングを複数回に分けています。汎用品のロブスタは、この日と決めたら1回で熟度に関係なく収穫してしまいます。パパクチ農園では熟れ方を見ながら、タイミングを決めています。
木の下にタープ(シート)を敷いて、収穫中に落ちてしまうことのあるチェリーが、直接土に触れないようにしています。土壌菌がついたり、汚れてしまうのを防ぐ目的です。
余談ですが、パパクチでは常時43名が働いています。収穫期には加えて季節労働者さんにも来てもらっています。遠くから来てくれる人もいるので、滞在できる家と電気を用意しています。

なるほど。他にも気を付けていることはありますか?
パバンさん:収穫が終わると、すぐに敷地内にある加工場へ運び、チェリーの状態で一つ一つ選別しています。果肉除去する前には、浮力選別も行っています。

精製方法の特徴も教えてください。
パバンさん:パパクチ農園では昨今の需要に合わせて、ハニープロセスやアナエロビックプロセスにも取り組んでいます。
味わいをつくるための発酵工程では、パルピングのあとに、黒いタープ(シート)の上にパーチメントを移して、たたんで密閉します。4時間ほど嫌気性発酵させて、その後乾燥ベッドへ動かします。
以前はエコタクトを使ってその中で発酵させていたのですが、エコタクトもたくさん用意しないといけないし、破裂してしまうこともあって、この方法でやっています。
今度、発酵用のタンクも導入しようかなぁと考えているところです。
毎年、もっと良い方法を試行錯誤しているところです。

このねこぐるまは何用ですか?
パバンさん:これはパーチメントをパティオに広げていくために、自分でつくったものです。下に隙間があって、動かすとそこからパーチメントが地面に落ちていくような仕組みになっています。均一な高さで乾燥場に広げられるし、作業もしやすいんです。
乾燥場には、パティオのほかにも乾燥ベッドを用意しています。ウォッシュドはパティオで、水分を多く含んでいるナチュラルやハニーなどは通気性をよくするために乾燥ベッドで乾燥させています。精製方法によって使い分けをしています。

なるほど。パパクチ農園の随所に工夫が凝らされているのが分かります。こうした工夫や行動の一つ一つの積み重ねが、結果として「ファインロブスタ」へとつながっているのです。
「ロブスタの栽培に関してはどの農園にも劣らないこだわりや誇りを持ってやっているんです。」
そうお話してくださったパバンさんの表情からは、おじいさんの代から続いてきた農園を守り抜く、誇りのような自信のような、コーヒー生産に対する実直な強さが感じられました。
ファインロブスタとは?

ファインロブスタは、CQI(Coffee Quality institute、コーヒー品質協会)に認定されたRグレーダー(Licenced R Grader)によって、「Fine(ファイン)」と評価されたコーヒーです。評価を受けるためには、CQIに申し込みを行い、サンプルを提出し、認定を受けた機関で鑑定をしてもらいます。ファインは訳すと、「良い、すばらしい」という意味。CQIとSCAの評価基準にもとづいた規格で、品質を示すひとつの指標でもあります。
アラビカ種のコーヒーにおいて、SCA(スペシャルティコーヒー協会)の評価基準に従い80点以上のスコアを獲得したコーヒーは「スペシャルティ」グレードとされていますが、ロブスタ種(カネフォラ種)の場合は「ファイン」グレードとされ、通称、「ファインロブスタ」として出回っています。
一般的に質よりも量が重視されているロブスタ。その“品質”に注目が集まり始めたのはここ10年ぐらいの出来事です。CQIは2009年にはじめてロブスタに関するシンポジウムを開催しました。また、ファインロブスタという概念の普及と発展に重要な役割を果たしてきたのがアフリカの一大コーヒー生産地、ウガンダです。2010年、CQIはウガンダ・コーヒー開発局(UCDA)と協力し、ファインロブスタの品質評価に特化した初の「Qロブスタコース」をウガンダで開催したのです。その後、Rグレーダーの存在やファインロブスタの概念が少しずつ浸透していきました。

CQIではロブスタのカッピング方法も規定しています。カッピング用のサンプルの焙煎は、アラビカ種よりも深めが基準です。豆を挽いていない状態でのアグトロン値(色味を数値で表したもの)は48、挽いたときのアグトロン値は78±1が目安とされています。
カッピングフォームはアラビカとは異なり、Fragrance/Aroma(粉の状態や注湯した時の香り)、Flavour(味)、Aftertaste(後味)、Salt/Acid(塩味と酸味のバランス)、Bitter/Sweet(苦味と甘味のバランス)、Mothfeel(口当たり)、Balance(全体のバランス)、Uniformity(均一性)、Cleanup(クリーンカップ)、Overall(総評)の項目を評価します。UniformityとCleanupは、用意した5カップすべてが均一で問題がなければ10点。残りの7項目はそれぞれ6点から10点の範囲で評価されます。
アラビカの評価で見かけない項目がSalt/AcidとBitter/Sweetです。アラビカではAcidity(酸)を評価しますが、ロブスタはSalt/Acid(塩味と酸味の比率)を評価します。ロブスタにはもともとカリウムが多く含まれており、塩味が強い傾向があります。CQIは塩味は欠点ではないとしていますが、塩味が控えめで酸味が感じられるコーヒーを高く評価しています。Bitter/Sweetでは苦味と甘味のバランスを評価します。苦味が少なく甘味が多いほど高評価になります。
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複数のアラビカ種の豆にロブスタ種の豆を、
ブレンドして味わいを確かめる検証を行いました!