生豆の保管について

生豆の保管はどうするのが良いですか?ということをよく質問受けますので、少し書こうと思います。

まず、生豆について理解してみましょう。

コーヒーチェリーの中にある種。通常合わさるように2つ入っており、その周りには、シルバースキン(integument)があり、それをパーチメント(endocarp)が覆っています。そして、その周りにミューシレージ(mesocarp)が覆い、一番外側の外皮(Epicarp)となります。

*ピーベリーは下記の絵のように一つの種のみが大きくなり、もう一つの方はパーチメントの破片のような形になります。植物学上では、発達不全とみなされています。ちなみに、コーヒー研究をしていたときに、インドネシアのリントンでピーベリーのみが結実するコーヒーの木ががありました。あれは興味深かったです。

収穫したてのコーヒーは、瑞々しく、外皮を指先でぎゅっとつまむと果汁が絞れます。2−3滴ですが。

乾燥前の生豆はたくさんの水分を多く含んでおり(40~50%)、指で曲げると曲がるほどです。それをゆっくりと乾燥させ水分値9~12%までに仕上げると保存可能な状態になります。なぜ9~12%かというと8%以下は、脆くなり、輸出前の脱穀やスクリーン選別等の機械に通すと割れてしまいます。13%以上になるとカビが繁殖する可能性がとても高くなります。

また水分値だけでなく、水分活性値も重要になります。水分活性値とは生豆の中で自由に動ける水(自由水と言います)の度合いを値化したものです。水分値では、この自由水とタンパク質とかにくっついている水分(結合水)を区別して測ることができないため、水分値が10%だったとしても、水分活性値が高い場合は、カビの発生が起こり、産地から輸送して日本に着いた頃には、あんなに綺麗なグリーンな生豆が真っ白になった。なんてことが起こります。僕も産地で輸出業務をしていた時、一度失敗したことがあります。笑

その水分活性値、これを産地でちゃんとチェックしているところはまだ少ないく、また世界的な基準というのはまだ確立されていません。経験上で言うと55%ぐらいが品質を保ちながら、輸送中の変化を少なくすることができると思います。

*As Oneという機械を使ったりしていますが、こんな小さいのにめちゃくちゃ高いです。ご興味ある方はこちらから購入できます。

さて、水分活性値は自由に動いける水を値化したもので、55%ぐらいが良いと書きました。つまり、55%はまだ反応可能ということなので、内部で、また外部の物質と反応してしまいます。そうすると最初の品質から変化してしまい、品質劣化が起こったりします。そのため、適切に管理することが重要です。

通常、生豆の保管に適している温度は15度〜20度、湿度は30%~50%。こういった条件が良いとされています。

湿度は水分値に影響するだけでなく、カビ発生のリスクも上がるため、ちゃんと管理する必要があります。下記のグラフは、湿度上昇とともに変化する生豆の水分値のグラフです。

S曲線を描いているのが生豆です。
湿度が50%以下であれば、水分値が12%以下で保たれるため(外気温度によって変わりますが)、比較的安定して管理することができます。カビの発生リスクも、湿度上昇とともにどんどん上がり、50%を超えてくると良くありません。

生豆も焙煎豆と同じように、日が経つにつれて品質が落ちてきます。そのため、必要分を小まめにご注文いただくのが良いと思います。

長期的に保存する場合は、密閉した容器に入れ、定温の(できれば上記のような湿度と温度で)場所に保管してください。定期的に容器に入っている生豆を混ぜるとカビのリスクを減らすことができます。

とはいえ、管理をしっかりしていたら年間通じて同じ品質を保てるかとなると、どの産地においても難しく、多少なりとも品質の劣化はおこなります。

シアトルで開催されたコーヒー展示会に出席した時、いろいろなロースターさんたちと話す機会があり、商品ラインナップについて伺いました。「常に鮮度の高いコーヒーを提供するために、通年で同じ商品を扱うのではなく、その時その時に旬なコーヒーをコーヒーラバーたちにお届けすることを主に考えている」といった返答でした。

日本の場合は、同じ品質・商品を通年で販売したいという方が多いのではないでしょうか。

国が変われば考え方も全然違うんだな〜と思いました。

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