マッドマン(泥男)コーヒーのストーリー

コーヒー生産地としてはあまり聞きなれないパプアニューギニア 東ハイランド州 アサロ町で生産された希少なビレッジロットが入荷しました! その名もマッドマン(泥男)コーヒー。少し変わったこのネーミングは、この産地に暮らす、民族の伝説に由来しています。

多くの民族が共存する地域

パプアニューギニアは、800以上もの民族が暮らすとされる、多民族国家です。アサロ町も、10ほどの民族が生活していますが、現在では、あなたの民族は? と尋ねても本人も即答できないくらい、複雑化しています。

言葉の壁はあるのか? と聞くと、「民族は違えども言葉が同じ場合もあるし、全く通じない場合もあるよ」と教えてくれました。さまざまな文化が入り混じるこの町で、アイデンティティのひとつになっているのが、マッドマン伝説です。

マッドマン(泥男)伝説

アサロはその昔、他の民族との戦いに明け暮れていた。勝利すれば相手から略奪し、負ければ全てを奪われた。
そしてある日。強い民族が村を襲った。こりゃたまらんと村人は逃げたが、逃げ遅れた人は命からがら泥の中に体を埋め、隠れた。


逃げ足を追って沼のそばまでやってきた敵は、その足跡が途絶えていることに驚き、混乱する。敵には、泥の中で息を殺しながら彼らが過ぎ去るのを待つ、村人たちの姿が見えていないのだ。


今ならば彼らの意表を突くことができる! さぁ戦おう! と、勢いよく泥から飛び出して立ちはだかると、敵は泥のお化けが襲ってきたと勘違いし慌てふためいた。消えた村人の代わりに、いきなり泥が襲ってきたからだ。こうして、アサロの人びとは、無事に敵を撃退することができた。

そんな逸話から、彼らはマッドマン(泥男)の民族と呼ばれるようになりました。

農園主 ピーターさんがまとめた Siwet Plantation

パプアニューギニアにおける農園の管理は、日本のイメージとは異なっています。土地の所有者は周辺の民族・氏族に何かを分け与える、そうしないと闘争が起こるこの国では、周辺民族とのいざこざで取りつぶしになった農園や加工場が、そこかしこにほったらかされています。強いリーダーシップで人々をまとめ上げることができなければ、品質の安定は図れないのが現状です。

ピーターさんは自らナタをもち、率先して動くリーダーです。剪定、カットバック(木を根元近くで切り落とし、新しい枝を育てる方法)、雑草取り。農園で働く4民族、およそ6000人をまとめながら、さまざまな品種の栽培を手掛け、農地を拡大し続けています。土地の所有や拡大は、周辺民族から信頼され、影響力を持っているからこそできることです。

今回入荷したマッドマンコーヒーをつくったのは、シウェットプランテーション(Siwet Plantation)。1953年にひらかれた農園で、設立者は、マッドマンの血を引く民族の、勇敢な戦士だったそうです。現在の農園主は、その孫のピーターさん。つまりここは、マッドマンの子孫が運営する農園なのです。

彼らの仕事の丁寧さも、この農園の魅力の一つ。アカシアの木陰で、2m×2mの間隔を保ちまっすぐに植えられたコーヒーの木。面倒な雑草取りを怠らず、緑肥のすき込みがしっかりと行われている土は、黒々としていてなんでも育ちそうです。小規模な区画を見てもカットバックが行われており、木の管理が行き届いていることが分かります。

この村のコーヒーを作りたい!

産地担当が感銘を受けたシウェットプランテーション。マッドマンの伝説や、民族的にも複雑な土地で人々をまとめあげたピーターさんの存在に魅力を感じ、この村でオリジナルのロットを作り、彼らのストーリーを日本のみなさんに届けたいと思いました。コーヒーの「顔」としてマッドマンのデザインを麻袋に付け、「マッドマンコーヒー」はできあがりました。

味わいは、やさしくマイルド。焙煎によって、甘さとボディが光るコーヒーです。コストパフォーマンスも高いので、ブレンド使用にもおすすめ。まずは少量から、彼らのストーリーとともにお試しください!