先日、私たちが扱っている動物支援コーヒーや生産者支援コーヒーを輸入してくれているトレーダーさんとお話しする機会があり、いろいろと伺いました。
サステイナブルコーヒーとして、環境や生産者にも焦点を当てて継続的にコーヒー生産ができる環境づくりをしてもらおうというコンセプトのもと、商品作りをしているコーヒーです。
グアテマラ カフェ ピューマ
グアテマラ フライハネス 苗木プロジェクト
タンザニア チンパンジーピーベリー
コンゴ コパーデ ローランドゴリラ
等々です。
なぜこういったコーヒーを取り扱うようになったかという経緯を伺ったので、少し詳しく書こうと思います。
そもそも、サステイナブル、サステイナビリティといった言葉はいつぐらいから使われはじめたのでしょうか。
2000年以前は、環境問題や経済格差といった個別の問題に焦点が当てられ、それを解消するための認証が作られはじめました。例えば、ECO-OK(今のレインフォレスト認証の元になる認証)やフェアトレード認証が出来上がりました。
2001年、コーヒー危機。コーヒー相場が41セントとなり、世界の生産者が全くやっていけない状況になった時代。この時代にはさらにフェアトレードの波が世界で広く起こりました。しかし、日本をはじめ消費国側からの援助や支援はそれでも少なかったため、生産国側の政府機関が生産者への支援を行っていました。(生産を離れゲリラへと転身してしまう生産者が多かったことも理由のようです。)
こういった状況もあり、2005年〜2010年ぐらいから、ようやくサステイナビリティという言葉が使われるようになります。
2012~2015年、さび病が中米で蔓延し、生産者への負荷がかなりかかってくるようになります。この頃には、スペシャルティコーヒー、品質に特化したコーヒーが人気を博していたので、一部のエリート農園、有名農園は引き続き脚光を浴びる一方、それ以外の農園はさび病による負荷が重くのしかかってきていました。ハイブリッド品種への植え替えのスピードが上がった時期でもあります。
気候変動がようやくコーヒー業界でも話がではじめたのは、2017年頃から。「2050年問題」として、コーヒーが生産されなくなるのではないかという不安がコーヒー業界に広がります。
そして、2018年ー2019年あたりから、SDGsというコンセプトを意識した商売を求められる雰囲気が日本にも広がります。
というのが現在までの大まかな(随分とざっくりとしていますが)流れかなと思います。
コーヒーはほぼ100%輸入なので、輸送にかかる燃料は大きく、現在の「脱炭素」の流れからいうとよくないものとなります。また、労働賃金が安い生産国だからこそ成り立つ商品であり、そのまま現状を維持していくということは、生産国への還元がなされないということになります。SDGsのコンセプトからかなりかけ離れています。
そこで大手トレーダーのボルカフェさんは、SDGsに則って、小規模・中規模のコーヒー生産者がいかに自分の土地で生産性を上げて、品質をあげて、収入を向上していけるかという取り組みをはじめました。
それがVolcafe Way
Volcafe Wayは、ボルカフェが正社員としてコーヒー専門家集団250名を雇い、主要な10の生産国に対して今あげた目標を達成するために生産者とともに活動をしています。活動は、各生産者の農園情報(品種や標高、土壌の状態など)をまとめ、世界の生産者をSNSでつなぎ、直接生産者さんたちが別の国の生産者と意見交換ができる場を作っています。農業技師たちを各農地へ派遣し、直接農家に指導し、それとともに、NGO・学術機関と共同で環境保全へのインパクトを大きく、広く支援をしています。
新しい取り組み産地においては、まず農業技師を派遣し、リーダーとなりえる中核の農家さんを探します。それとともにその産地の環境を調査し、良い産地となり得ると判断した場合、その中核となる農家さんとともにモデル農園を作り、周辺農家さんへ「見える農業指導」を行なっていき、プロジェクト化していくようにしています。
ペルーのプロジェクトの場合も、そのような取り組みで始められたコーヒーの一つです。
ペルーはここ10年ほどで、かなり品質の高いコーヒーができるということで、たくさんのコーヒー農園の開発がされてきました。それとともに原生林が伐採され、生態系がかなり崩れてしまった地域もあるようです。そこで、新しい農地を広げるということはせず、現在ある小農家さんのコーヒー農園へ農業技師を派遣し、品質と生産性をあげていこうという取り組みをしています。
高品質コーヒーが取れる産地、カハマルカのハエン市。そこから南へ少し下ったあまり人が入っていなかったカピージャという村へ農業技師を派遣したおり、ここは良質なコーヒーが取れ、積極的な農家さんが多いということがわかりました。そして、Volcafe Wayのスキームで、品質・生産性をあげて、生産者の収入を向上するコーヒーを作っています。
【20/21 クロップ】ペルー アンデスブルー 商品情報はこちら
今回からグアテマラのフライハネスという産地でも上記のようなプロジェクトを立ち上げました。
それが、苗木プロジェクト。
ブルボン種を育て、それを現在あるコーヒーと植え替えるというプロジェクトです。
それにより、品質をあげていくことができ、生産性を向上させることができます。
継続的に苗木の生産ができるように買付価格に50セント/kgを乗せています。
そんなフライハネスの苗木プロジェクトの動画を作ってくれました。
このプロジェクトコーヒーは、7月入荷予定ですのでお楽しみに!
閑話休題
生産者と共同生産者
ずいぶん昔の話ですが、
フィリピンで、ある大学の教授とミーティングをしているとき
「生産国と消費国のギャップ」についてのお話になりました。
消費者に、もっとフィリピンコーヒーを飲んでもらいたい。
しかし、消費者は、他のブラジルやコロンビアといった有名な生産国のコーヒーを好むし、
何より、そんなに産地にこだわって飲んでいるわけじゃない。コーヒーはコーヒーだしね。
そんなお話をしているときにその教授は
「チサンチショウ」って知ってる?と疑問を投げかけました。
もちろん「地産地消でしょ、知ってますよ。地元で収穫したものを地元で消費する。」と答えた僕に、
ニヤリと笑みを浮かべながら
「いやいや、その地産地消じゃないんだ。『地』という字を『知』に変えた方の知産知消。つまり知る産、知る消。この考え方が僕は重要になると思うな。まずは知ることだよ。」
最初は、よくいっている意味がわかりませんでしたが、よくよく考えると、なるほど、的を得ている考え方です。
つまり、産地を知ること、消費を知ること。これが大切なんだと。
消費者にとっては、その商品がどこで、誰が、どのように生産したものなのかを知ることから全てが始まる。
逆に、生産者においては、その商品が、どこで、誰が、どのように消費するのかを知ることが大切。
双方がしっかりとそれを理解した上でのモノの取引は、今まで以上に深みと広がりのある流通になると思います。
とても使い古されている考え方かもしれませんが、僕らにとっては、生産地、生産者をもっと知っていくことがよりサステイナブルなコーヒー流通を可能にしていくのだと思います。
そして、産地を、生産者を知れば知るほど、僕らは遠い生産国から多くの方々を介して届けられるコーヒーをただ消費しているのではなく、つながっていると感じれるのだと思います。
それはまさに、生産者と消費者、ではなく
生産者と「共同生産者」という考え方、
僕らも生産者と共にいる存在。
僕はこの考え方が好きです。
Volcafe Wayの商品もそうですが、海ノ向こうコーヒーで扱う商品が生産者を感じていただける商品になるようにこれからも努力していきます!
担当 山本
株式会社坂ノ途中
海ノ向こうコーヒー事業部
EMAIL: umi@on-the-slope.com
TEL: 050-7111-2209(平日10:00~17:00)
<京都本社>
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