こんにちは!海ノ向こうコーヒーの石川です。
だいぶ前のことになってしまいましたが、7月29日(月)〜30日(火)インドネシア・バリ島にてロースターさん向けのコーヒー産地ツアーを開催しました。
今回産地ツアーに参加してくださったのは、静岡県富士市で自家焙煎を行うSTERNEの芝田さんです。
「ほぼ初海外なので迷っていたけど、勢いで来ちゃいました!」という芝田さん。数日バリ島での時間を楽しまれてからの合流となりました。
29日の朝、集合場所はThe Koop Roaster & Café。バリ島スミニャックにある、日本人オーナーの大西雄季さんが始めた自家焙煎コーヒーのお店です。まずはこれから訪れるボン村のコーヒーをハンドドリップでいただきます。
そこからは、The Koop Roaster & Caféのスタッフさんが運転してくれる車でボン村のコーヒー農園へ。
道は他のコーヒー産地に比べるとずっと整っていて、電波もほぼ大抵の地域では通っているのでとても快適。
ちょうど訪れた時期がバリヒンドゥー教のお祭りと被っていたため、家々が道路に面したところには、ペンジョールと呼ばれる飾りが並んでいました。また、山を登っていく道中には、バリ島らしい棚田も各所で見ることができました。
2時間ほど経って到着したのは、ボン村にあるパック=スラマットさんのデモ農場。その隣には精製所と、今日泊まることになるジャワ島伝統建築の古民家を移築したゲストハウス。
到着して荷物を置くためゲストハウスに向かうと、そこにはCafe 七草のロースター、瀧本さんの姿が。
ここからは、瀧本さんとも合流してお待ちかね農園ツアーの時間です。
この地でコーヒー生産を始めた想いを熱く語ってくれるパック=スラマットさん。
芝田さん・瀧本さんも一緒にコーヒーチェリーの収穫をします。
こちらはパック=スラマットさんの牛舎。この牛たちの糞は堆肥になり、コーヒーの木の栄養となります。
コーヒーの精製に使う水はとてもきれい。美味しくてゴクゴク飲んでいる海ノ向こうコーヒー産地担当の安田。
パック=スラマットさんはとにかく実験が大好き。「これはXX時間発酵させてから●時間発酵させた二重発酵で、こっちは…」とひたすら何通りも試した精製方法について語ってくれます。
ちょっとここで一休憩。バリ島現地の人々の飲み方でコーヒーを淹れます。
作り方は、とっても簡単。まず、写真のような深煎りの粉末コーヒーを用意します。そこに沸騰したお湯を注ぎ、コンデンスミルクをたっぷり入れたら出来上がり!
そのお味は…「うーん、これはこれでありかもしれない」「美味しいよね?」とコーヒー屋さんのお二人。気になるその真偽は、みなさんぜひ現地で確かめてみてくださいね。
収穫したコーヒーチェリーを早速湧き水で洗ったら…パルピングマシーンに入れてコーヒー豆(種)と果実・果皮を分離させます。ここで大活躍しているのはThe Koop Roaster & Caféで普段はバリスタとして働くバユくん。町から農園や精製所が遠いためあまり積極的に来たがらないそうですが、精製所での仕事の流れもわかっていてテキパキと働きます。
コーヒー豆は発酵槽(ここではバケツ)に入れて水を貼り、時間をかけて発酵させます。
「うーん、いい匂いだね」とスラマットさん。
聖なる水が湧き出すスポットにも連れて行ってもらいました!こんな感じでキャベツとみかん畑の向こうをずっと歩いていきました。水が湧き出す場所も神聖な場所であるとされるため、少し緊張感がありました。
夜はパック=スラマットさんが準備していた豆を、ひたすら焙煎しました。静かな夜、シャリンシャリンと豆の音が響きます。
そしてお待ちかね、晩御飯の時間。バリの郷土料理である焼き鳥「サテ」や野菜とご飯を皿にとって、手づかみでいただきます。
お腹もいっぱいになり、今日はここまで…と思いきや、ここで他の農家さんが収穫したコーヒーチェリーが精製所に運び入れられて来ました。パック=スラマットさんと、奥さんのイブさんはそのチェリーをせっせと洗っていきます。コーヒーチェリーを収穫したまま放置しておくと勝手に発酵が進んでしまうため、できるだけ早く洗ってパルピングし、発酵槽に入れてあげることが大事なのです。
スラマットさんが自慢気に見せてくれたのは、現地語で「サリ」と呼ばれる自家製の天然酵母。畑に生えているオレンジや、パパイヤなどを使って作ったそう。この天然酵母を入れて発酵させることで、独特の風味が出ると言います。
翌朝向かったのは、イブさんのご実家。ご実家でもコーヒーを栽培されています。「スラマッパギー(おはようございます)」と声をかけると、ぬっと顔を出してくれました。この方が、イブさんのお父さん。牛にあげるための草を刈っていました。
杵と臼で、何をしているかわかりますか?
実はこれ、ナチュラルで精製したコーヒー豆を脱穀する作業。ナチュラルで精製を行うと、コーヒーチェリーの実と皮の部分が種にくっついたまま乾燥します。その実と皮を剥がすために、杵でついてあげるのです。
これが意外と難しく、苦戦する日本人勢の姿を見てイブさんのお母さんは大爆笑。スラマットさんは笑いを堪えているような表情です。
脱穀が終わったら、ふるいにかけてコーヒー豆以外の皮や実を落とします。これもまた難しいのですが、イブさんのお母さんは職人のように手慣れた様子でちゃっちゃと仕分けを終わらせていきます。
せっかくなので臼と杵、脱穀と仕分けを終えた豆を囲んで集合写真。
ゲストハウスに戻って来て、乾燥棚(アフリカンベッド)の上の豆の様子を見たりなんかしていると…イブさんが、なんとおやつを持って来てくれました。タロイモの団子に黒糖のような甘いスープ、そして上にはココナッツ。これが、甘すぎず絶妙においしいんです!
おやつを食べたら、今年の収穫量やその精製方針、販売方法について話したり
子供たちと遊んだり
コーヒーを淹れたりして過ごします。
気づけばもうすぐお昼時。スラマットさんはバンジャール(町内会)に出かけてくるのだそう。私たちも、帰途につきます。
スラマット家の子供、アリくん。手に隠し持っているのは、コーヒーチェリー。
産地ツアーを終えた時、芝田さんがおっしゃっていた「初心を思い出したとともにますますコーヒーが好きになりました」という言葉が私にとってはとても印象的でした。
コーヒーの奥深さは、コーヒーの味や抽出方法、焙煎に止まりません。どこで、どんな人たちが、どんな想いで、コーヒーを育て、収穫し、精製しているのか。そこも含めてコーヒーを味わってみることができたなら、ますますコーヒーを愛することができるようになるのではないでしょうか。
全国のロースターさんたちが、コーヒー産地の物語を、自分たちの焙煎したコーヒーと一緒に届けてくれたなら。
小さな村の一人の農家さんの物語も、みんなで語り継ぐことができます。
全国のコーヒーを愛する人々が、コーヒーの物語も一緒に愛することができるようになれたなら。
そこにある一粒一粒のコーヒー豆が、一人一人の農家さんが、きっともっと輝き出すように思います。
バリ島ボン村のパック=スラマットさんのコーヒーは、今年の冬にまた入荷する予定です。
今年も美味しいコーヒーを無事みなさんに届けられますように。